このレビューはネタバレを含みます
ソフィアコッポラは、自分の居場所や在り方が分からず、人生の中で迷子になって途方に暮れて生きている空虚さ、世界の流れに自分だけ乗り遅れてしまったような孤独感を、言葉は最小限に、静かな映像だけで描くのが本当にうまい。
主人公も、誰もが羨むセレブ生活の中で、心が満たされず、目的もなく、空虚に生きている。自分でも虚しいとは思いつつ、なんとなくなるがままに日を重ねていた。だが、予定外に娘と長く一緒にいられた日々の中で、彼は娘との人生を楽しみ、父親らしくなっていき、真の意味で人生と生きる喜びを実感。
冒頭に同じところをグルグル回り続けていた高級車は、もう過去の日々には戻れないと、確固とした目的地に向かって真っ直ぐひた走る。高級車という虚飾の皮も脱ぎ捨てて、ちゃんと自分の足で立って歩んでいく。