フィルモワ

ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン 〜ア・フィルム・アバウト・ブラー~のフィルモワのレビュー・感想・評価

4.0
90年代中頃のイギリスで、あのオアシスと人気を二分したバンド、ブラー。王道ロックをストレートに鳴らしたオアシスに対して、ややマニアックな音作りのため、世界的な知名度こそ彼らに譲りますが、甘いルックスと相反するニヒリズム、そしてもちろんその音楽性で、ここ日本でも多くのファンを獲得していました。そして、私もその内の一人。

絶頂期の疲弊を背負って、ギタリストの脱退から長く空中分解したままだったブラーが、2009年、これまで何度となく噂され、期待されていた再結成を果たしました。これはその様子を追ったドキュメンタリー。十年の時を経たバンドの再生は、絶交したかつての親友との復縁の物語でもあります。思い出の地を巡る再結成ツアーの道のりと、彼らの駆け抜けた歴史とが絶妙に交差して、すべての同乗者たちを感動のゴールへと誘います。

ポップ・アイドルに仕立てられた表現者としての苦悩、連日のばか騒ぎから引き起こされる退け難い空虚感。離婚や別離、アルコール依存にパニック障害。彼らの険しい回り道が、真実本当に美しいこの一瞬に結実したのかと思うと、すべてが愛おしく、思わず泣きじゃくりながらかつての友人と連絡を取り、再会の手筈を整えたのでした。