朱音

マン・オブ・スティールの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

マン・オブ・スティール(2013年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

DCEUの一作目、マーヴェルと比べて色々言われがちだけれど、本作に限って言えば出来は悪くなかった。どころかコミック的な画のカッコよさ、完成度はとても高かったと思う。

ヘンリー・カヴィルの惚れ惚れするような肉体美はスーパーマンを演じるに相応しく、現代風のアレンジによってデザインされたスーツ、鈍色掛かった紅マントを纏った佇まいは洗練されて美しい。別の言い方をすればバカっぽく見えない。これこそクラシックなアイコンを現代に甦らせる肝という部分をきちんと満たしている。

アクションは地上でのファオラ=ウルともう一人の兵士、2人のクリプトン人を相手取ったバトルが最も見応えがあった。超人的な能力がどれくらい凄いのかを測るのに他の惑星や宇宙空間でドッカンドッカンやられてもあまり実感がわかないが、破壊される建物や車、道路、逃げ惑う人々など、言い方は悪いが身近なオブジェクトが指標としてあることでそのダイナミズムが実感出来て、なおかつドラマとして緊張感も生まれる。
そういう意味で上記のバトル・シーンにはこの映画に求めていた要素が最も表れていたし、ザック・スナイダー流アクションの特徴が最大限発揮されていると感じる。また単純に映像的な動きのラインが最も見やすいシーンでもあった。
逆にそれ以外のシーンでは主にCG表現など、やたらと情報量が多く、細かすぎるカットやブレるカメラなどで人物の動きや、位置関係、それぞれのキャラクターが行っている事などが把握しにくく、見疲れする。


脚本や構成、一部のキャラクター動機などにも疑問を感じる。
冒頭のクリプトン星での一連のくだりは本当に退屈で、最先端のCGを駆使したSF的ガジェットを展開させるのを見せたいのは分かるし、確かにそれ自体は良く出来ていると思うが、その間物語が完全に止まっているという時間が長い。本作で最もフィクショナルなシークエンスは正直ディティールにこだわられたところで関心が湧かず、また物語的に見てもジョー=エルもゾッド将軍も感情移入し難いキャラクターなのも相まって、シリアスにすればするほど浮いて見える。

個人的にはこの映画でいちばん好きになれたのはケビン・コスナーとダイアン・レインが演じた地球での育ての両親だ。名優2人の存在感と確かな演技によって親子の絆やクラークが受けた精神的影響を比較的短い尺で、端的に表現していてグッと来るものがあった。
ただ飼い犬を逃がす為に身代わりで竜巻に呑まれる死に様は、絵的にはなんか凄いけど、思い返すとちょっと滑稽に感じなくもない。

ヒロインとクラークの関係の変化も急激過ぎて違和感があるし、ヒロインの職場の上司や同僚がラストバトルの最中に繰り広げる救出劇は取って付けたように感じた。ローレンス・フィッシュバーン太ったなぁ…。

などと気になる点も多いが、鑑賞中はとても楽しめた。
ラストバトルはクリプトン人たちの能力がスーパー過ぎて、表現もインフレ気味で人巻き込み過ぎだけれど、コンクリートのビルが豆腐の様に崩れる様はやっぱり見たかったものだし、何より本作はクラプトン人であるカル=エルが、地球人クラーク・ケントとして、スーパーマンとしてのアイデンティティを確立してゆくドラマとして面白かった。
朱音

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