emily

恋のロンドン狂騒曲のemilyのレビュー・感想・評価

恋のロンドン狂騒曲(2010年製作の映画)
3.5
 ロンドンを舞台に二組の夫婦の4つの恋の物語。死の恐怖から若返りのため体を鍛え、若いコールガールの恋人を作る夫。妻のヘレナはインチキ占い師に言われるように新しいパートナーを見つける。一方娘のサリーはギャラリー経営者に惹かれ、その夫は向かいの美女に心惹かれ・・

 それぞれ大事な物を見失い、目先の物に走り、あたふたしている姿は傍からみたら滑稽でみっともない。しかし本人たちは至って真面目に幸せを求めているのだ。ただそれを自分で勝ち取ろうとせず、どこか他人任せで自分に言い訳して生きている。陽気な音楽とナレーションでコミカルかつ皮肉たっぷりにまとめあげていき、滑稽だかどこか憎めないと感じるのは、やはりどこかしら自分と重なる部分があるからであろう。

 当然努力なしに得ようとするもの、大事な物を見失ったままの彼らはすべては破綻するように全くもって上手くいかない。しかし上手くいかないからいいのだ。これでうまく行ってしまったら人は努力することを止めてしまうだろう。一人幸せそうに見える母親は、嘘を信じる事で勝ち取った幻想の幸せに溺れている。しかし真実がどうかなんて大事ではない。要は自分が信じた物が真実であり、信じられる物がある事自体が幸せな事のように思える。空虚な人生であれ、たとえ幻想であれど信じた物は幸せになれる。と見せかけて、それは真逆の事を伝えているようにも見えるラストの皮肉は苦笑いしか出ない。
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