ゆーさく

恋のロンドン狂騒曲のゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

恋のロンドン狂騒曲(2010年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

とんでもない不安の中に登場人物たちを置き去りにしてのエンドロール。


ウディ・アレンはいつもこんな風に、観客の胸をざわざわさせたままエンドロールへ放り込んでしまう。

いつも通りの皮肉な語り口には、ある意味安心感がある。
ウディ・アレンが好きな人なら、きっとこれも好きだろう。



長年連れ添った妻を捨て年甲斐もなく滑稽に若さを追い求め、勢い余って若くて馬鹿な娼婦と結婚してしまうアンディ。

捨てられたショックで、インチキ占い師の予言にのめり込み、ひたすら鵜呑みにしては、娘夫婦に余計なアドバイスをする、はた迷惑なアンディの元妻。

彼らの一人娘で登場人物のなかでは最も現実的にモノを考えるが、夫がいる身でありながら、職場の上司に恋心を抱くサリー。

作家になることにこだわり続けるも泣かず飛ばずで、向かいのアパートに住む女学生に恋心を抱くサリーの夫。


上機嫌と不機嫌を行ったり来たりする彼らの夢や恋の行方。
1人は幸福に、3人は不安の中に残されるラスト。
彼らのうち、最も幸福になれた1人は誰だったのかに注目。


「人生の不安や苦痛にどうやって対処していくか。人はそれを悩みながら生きていく」
というセリフ。


信じたい事しか信じない。
自分の都合の良い部分しか耳に入れない。
そしてそれを盲目的に信じ抜くこと。

それが出来た人は幸福だ。

この物語のメッセージもその辺にあるのかな?




アンソニー・ホプキンスはそのままで充分格好良いのに。。。
若作りに精を出す姿なんて観たくなかった。
なんて憐れなんだろう。



元妻の完全にオカルトにはまってしまった目元の演技が見事。
肩掴んで揺すぶりたくなる顔してる、正気に戻れ!って。
ナオミ・ワッツのラストのアップがまさにそんな感じ、「正気に戻れ!ババア!!」みたいな表情。面白い。


でも考えてみれば、占いとか予言って、本人の背中さえ押してくれれば、その言葉が正しいか正しくないかは大した問題じゃないのかも知れない。

本人が言って欲しいことを言ってあげること、前に進ませてあげることが本懐であって。

そういう意味では、本作のインチキ占い師のやり方は、言うほどインチキではないかも。
ゆーさく

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