踊る猫

映画と恋とウディ・アレンの踊る猫のレビュー・感想・評価

映画と恋とウディ・アレン(2011年製作の映画)
3.7
ウディ・アレンの映画を初めて観たのはいつだっただろう。子どもでも笑えるような単純で力強いギャグではなく、知的な素養がないと笑えないジョーク(アイロニー、かもしれない)を繰り出す人として自分とは無縁な存在と思っていたのだが、いざ彼の映画を見てみるとこの人はむしろ自分の子どもの部分を大事に持っている人だなと思った。その最たるものが「死への恐怖」と「運命の不条理」だ。このドキュメンタリーでもウディは率直に「死への恐怖」を吐露し、その恐怖を抱えつつもジョークを考え続ける頭の回転の速さを発揮する。気難しい人かなと思っていたのだが、少なくともこの映画の中のウディは女性の心を掴むことができる繊細な人であり、決して威張らないし己のカッコ悪い部分を隠さない人でもあると思えた。長いキャリア、迷走していた時期もある。コケたこともあるし、失態も一度や二度ではない。でも、彼は彼にしか歩めない道を歩いてきた。そんな彼に女神が微笑んだから『ミッドナイト・イン・パリ』の閃きは見事な映画となって結実したのだろうが、ウディならこれを運が良かったとかなんとか「運命の不条理」だと語るのかもしれない(それはそれで「喜劇界のカミュ」然としているが)。
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