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華麗なるギャツビーのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

華麗なるギャツビー(2013年製作の映画)
4.0
小説家志望の青年Nick(Tobey Maguire)は、夢をあきらめてニューヨークの証券会社へと転職する。彼が購入した郊外のコテージの隣には欧風の古城が建っており、謎の大富豪が夜な夜な盛大なパーティーを催していたのだった。ある晩、招待状を受け取ったNickがパーティーへ赴くと、自分だけが唯一の招待客であるという事に気がつく。


◆Rhapsody in Blue

WWI直後の戦後復興の好景気に湧き立つ《狂騒の20年代》のニューヨークを舞台に繰り広げられる豪華絢爛な世界。謎の大富豪Jay Gatsby(Leonardo DiCaprio)の城で催される盛大なパーティーは、毎夜ウォール街の大物やセレブ達でごった返していた。賑わうパーティーの中を彷徨うNickの前に、城の主人である謎の隣人が遂に姿を現わすシーンが最高にゴージャス。

階下で繰り広げられるパーティーと、一斉に打ち上げられる花火を背に、バルコニーでレオ様が振り返る演出が完璧すぎる。超カッコいい。ブルー系のライトアップと、ブルーの花火を背景に、レオ様のブルーの瞳がめちゃくちゃ映える。BGMもGershwin作曲のRhapsody in Blueと洒落込んで、この場面だけでも一見の価値があったと思える完成度でした。(最後まで観ると事前準備って大切だなってしみじみ感じちゃうよね。段取り八分!)


◆ザ・狂騒の20年

連日高値を更新する株価。乱立する摩天楼。禁酒法と密造酒。弛んでいくモラル。作品の舞台となっている1920年代に、アメリカを代表する作家F.Scott Fitzgeraldによって執筆された小説が原作とのこと。原作は未読ですが、戦後復興の好景気に湧く当時の大量消費と物質主義の中に漂うどこか虚しい空気感が印象的でした。作品に登場する人物も皆一様に、華やかさの中に虚しさを抱えていた様に映ります。

Nickが購入したコテージが建つのは、所謂《成金》の邸宅が連なるロングアイランドのウエストエッグ。眼前に広がる入江の対岸こそ、生粋の《高級住宅地》イーストエッグ。《社交界の華》と称される程の美貌を持つ従姉妹のDaisy(Carey Mulligan)が嫁いだ億万長者Tom Buchanan(Joel Edgerton)の大豪邸も其処にありました。

生粋のボンボンであり、勝気で豪快なTomは、時代を象徴するシンボルの様。男尊女卑と人種差別、そして貧富の差。莫大な富を持ち、唯我独尊な振舞だった彼が、Gatsbyの登場と共にペースを乱され、幻想を砕かれ、狼狽していく様。人生も他人も意のままに支配できると思っていたTomが現実に直面した際に出た弱さが印象的でした。


◆ピュアとイタいは紙一重

Tomだけでなく、Gatsbyもまた《狂騒の20年代》を象徴している様に描かれています。戦争で負った傷を抱え、戦後復興の好景気に湧き立ちながらも、その鍍金を剥がされて最後には暴落していきます。

自分の望みを叶えるため、なりふり構わず突っ走ってきた男が、惚れた女性の前で見せる不器用さ。一途な愛を貫いたと言えば聞こえが良いですが、〝レオ様だから見ていられた〟という節がある気がします。

妄執に取り憑かれた姿は狂気以外の何者でもなく、完璧を求めれば求めるほど、理想と現実のギャップが醜く歪んで横たわる。〝そういう〟発言が許されるのは高校生の恋愛までだと思うのです。《初めて》に価値を見出せなくなってしまった自分には、このロマンスは刺さらず羨ましいとも思えませんでした。(あ、僕も擦れてきてるのかなぁ。)


◆雪だるま式に膨れあがって…

☑︎ 焼け木杭に火がついたDaisy
☑︎ 精神科に通う事になったNick
☑︎ 灰の谷のWilson(Jason Clarke)

TomやGatsbyだけでなく、作中に登場する人物の辿り着く結末はみな悲壮感漂うもので、株価の大暴落と共に世界恐慌に突入した時代の末路とかぶります。この悲劇的な結末は原作ままなのか、映画の演出なのかわからないですが、結末が悲劇的であればある程、序盤の華やかな空気感が際立ちますし、激動の時代背景とリンクしていく様でした。

同じく20年代のニューヨークを描いた【ファンタスティック・ビースト】と比べて随分と華やかな世界。ラストまで観た上で再鑑賞すると、1周目ではスルーしていた仕草や台詞の細部に至るまで幾重にも伏線が張り巡らされていたことがわかります。豪華なキャストと美しい映像。激動の時代を舞台に繰り広げられる栄枯盛衰の物語。ちょっと尺が長いですが、10年も前の作品とは思えないクオリティの良作でした。