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のぼうの城の福福吉吉のレビュー・感想・評価

のぼうの城(2012年製作の映画)
4.0
戦国時代、豊臣秀吉が天下統一に動き、関東の北条氏を攻め込むことになり、北条氏の配下の忍城(おしじょう)の城主、成田長親(野村萬斎)のもとへも北条氏から協力要請が来る。豊臣側に内通していた忍城であったが、攻め寄せた石田三成(上地雄輔)の使いの傲慢さに嫌気がさして長親は豊臣側と戦うことを決断する。知略も武勇もない城主・長親を支えるため、部下と領民たちが一致団結して戦いに挑む。

ストーリーとして豊臣秀吉の時代を背景としたものであるが、特に詳しく無くとも、多勢の秀吉軍相手に少数の長親たちが活躍する物語であることさえ分かれば楽しめると思います。

主人公である成田長親は「(でく)のぼう様」と領民たちに呼ばれるおっとりした性格で威厳の欠片もない人物なのですが、皆から愛される才能とここ一番の肝の大きさがあり、その人物像の個性がとても魅力的でした。その部下の武士たちも個性派ぞろいで、観ている側としてどうしても長親たちを応援したくなる気持ちになりました。

対峙する石田三成は本作では知略に長けるものの軍略には才が無いものとして描かれており、他の作品の三成のイメージと違っていてとても新鮮に感じました。今回の忍城攻略は秀吉が三成に武功を立てさせるための勝ち戦として作られたものというのも面白いと思いました。上地雄輔の三成の演技は本作独自の人物像を作り上げていて、「これはこれでありだな」と思いました。

本作の見どころは忍城攻略の戦いだと思います。長親軍の優れた部下たちの奮戦ぶり、対抗する三成の水攻めと劇的に描かれており、水攻めで大水に家屋や田畑が飲まれていく様子は津波を思い出す怖さがありました。
そして、水攻め後の長親の田楽踊り。このためだけに野村萬斎が起用されたのではと思うほど、ふざけた空気と緊張感が同居する最高の見せ場でした。

とても面白い作品でした。喜劇でありながら所々でキュッと緊張感をひねり出す戦いが描かれた良い時代劇でした。

鑑賞日:2023年3月1日
鑑賞方法:BS日テレ
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