小一郎

東京家族の小一郎のレビュー・感想・評価

東京家族(2012年製作の映画)
4.0
山田洋次監督の『家族はつらいよ』シリーズ最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』を5月末に観たのだけれど、小津安二郎監督作品の特集上映が予定されていたので、それを観てから感想を考えようと思った。

そして小津安二郎監督の特集上映も観たのでそろそろ考えねばと思ったものの『家族はつらいよ』シリーズって、小津安二郎の『東京物語』(1953)にオマージュを受けたとも、リメイク作とも言われている本作が原点だよね、と思い鑑賞。

『東京物語』とほとんど変わらないストーリーながらも世界観は異なり、山田監督のフィロソフィーがきっちり出ている気がして、さすがだなあ、と。

比較すると、豊かさの代償として核家族化し親子の関係が希薄になっていく家族の姿と、それを甘受する親を描いている小津監督に対し、山田監督は核家族化はやむを得ないにしても、「優しさ」があれば親子の関係はいつでも元に戻れる、というようなことを描いたのだろうと。

本作は2011年12月公開予定だったが、東日本大震災により延期となり、脚本にも震災の要素を加えている。個人的には震災が本作の世界観にも影響を与えたのではないかと妄想する。

戦後日本は個人の幸せ追求の効率を高めることを良しとし、個人は自身が大切にする範囲を狭め、親をはじめとする他者との関係を希薄にしてきた。しかし、震災を契機に自分のことよりもまず他者を思いやる日本人の「優しさ」が見直されている気がする。そうした時機をとらえたのか、本作は個人が競争社会で生き残るための「強さ」よりも「優しさ」の方が大切だと主張している。

家族について負の面を描く小津作品に身につまされ、希望を残す山田作品に共感するけれど、両作からは同じメッセージを感じる。

結局「情けは人の為ならず」(「人に情けを掛けておくと、巡り巡って自分のためになる」という意味)であり、「正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶときには、親切を選べ」(『ワンダー 君は太陽』より)なのである。

●物語(50%×4.0):2.00
・猪苗代湖ズの『I love you & I need you ふくしま』で涙したクチなので、震災の記憶がまだ新しい公開時に映画館で観たらもっと響いた気がする(タブレットで2日かけて観たせいもあるかも)。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・妻夫木聡さん演じる平山晶次は、主役と同じくらい重要だったかと。あまり感情を荒立てない登場人物の中にあって、やや熱量高めで、普段通りっぽい演技にも意味があったのだろう。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・『東京物語』同様、細部へのこだわりを感じる。