エアール

白いカラスのエアールのレビュー・感想・評価

白いカラス(2003年製作の映画)
3.5
特権社会から逃げた女と差別社会から逃げた男。
2人は出会って恋に落ち、語らい、そして心を通わす。
歳について言えばふた回り以上も離れているが
初恋でもない、大恋愛でもない、でも彼女こそが自分の最後の恋の相手であると悟った男。
とある晩、男は女に向けて語り始める
ーー今晩まで
決して誰にも打ち明けてこなかったある秘密を…


アンソニー・ホプキンスとニコール・キッドマンが齢の壁を越えたカップルを演じた本作。
いや〜キッドマンの美しさには絶句しますね、本当に 笑
長身でスレンダーな体型といい、金髪が似合うあの美貌‼︎
鬼に金棒とはまさにこのことでしょう 笑

他、キッドマン演じるフォーニアの元夫、ベトナム戦争の帰還兵にして妄想症を抱えているレスにはエド・ハリス、
ホプキンス演じるシルクの若かりし頃をウェントワース・ミラー、
シルクの友人であり作家のネイサンにはゲイリー・シニーズらが顔を揃えます。
みなさんそれぞれ役割きっちりこなしていて特にハズレもおらず、
配役に関して文句はないっすね。
まあ〜個人的には若かりしシルクと図書館で出会い恋に落ちるスティーナを演じたジャシンダ・バレットの登場シーンが印象的でしたけど 笑
ちゃっかりケリー・ワシントンも出てました。
メガホンを取ったのは、数々の作品で脚本も務めた経歴ありのロバート・ベントン。


マサチューセッツ州にあるアテナ大学。
古典教授であり学部長でもあるシルクことホプキンス。
彼こそがユダヤ人初の大学教授となった人物であり、
さまざまな試みや合理化を推し進め三流大学を一流大学にまで押し上げた張本人。
話題に事欠かない人物であるが故に、周囲に多くの敵を作ってしまったこともまた事実。

5週目に入った自分が担当する講義に1度も出席していない学生たち
ーーその目に余る学業怠慢と図々しさに
講義中に彼が漏らした一言”spook”
幽霊、お化けの意味のほか、黒人(蔑称)の意味もあるこの言葉...
ーーもちろん彼は
その場に存在しない、講義を欠席し続けていることを主張したかっただけで
そもそも件の学生とは面識もなければ会ったことすらないのだが。

シルクの思いとは裏腹に
この発言が不適切であると
抗議が寄せられ、急遽開かれた集会では
参加した教授らに、人種差別だ、と糾弾される始末。
腹を立てたシルクは大学を辞任することに。
この一件が彼の人生を大きく変えることとなる。

職を失い、
その直後には妻 アイリスを血栓で亡くし、
これまで築き上げたものを一気に失ってしまうシルク。


それから月日は流れ
どん底にいたシルクが出会う2人の人物
ーー1人は作家のネイサン。
作品が賞の候補にも選ばれ一度は世間の注目を浴びるも
その後はスランプに。
妻とは離婚、そんなときに見つかる前立腺ガン。
世のしがらみから逃れるために森奥の別荘でひっそりと暮らす日々。
そんなネイサンとの間に芽生える友情…と。

そして2人目は、美女 フォーニアとの出会い。
郵便局や大学の清掃員として働く傍ら、酪農場で住み込みで牛の世話をして
生計を立てている彼女。
人を寄せ付けない、孤独感を漂わせる彼女にどうしようもなく惹かれていくシルクなのでありました。

物に執着せず、
もともと裕福な家庭の生まれでお嬢様なのだが
両親の離婚で母親に引き取られたあと
再婚相手である継父からもてあそばれ
訴えを起こすも誰にも信用してもらえず、
家を捨て大人になった彼女は元夫と出会い結婚するのだが暴力を振るわれ、
元夫との間に生まれた子どもは不注意による事故で死んでしまう。

壮絶な人生を歩んできたフォーニアとシルクのかけあい、
人種への偏見や差別から多くのものを奪われた人の人生観やその過程、決意と再起。
そんなお話から何を学ぶか…興味深いところには違いないです。
エアール

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