MasaichiYaguchi

砂漠でサーモン・フィッシングのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
意外なことに、釣り人は短気な人が多いらしい。
ところが釣りとなると、「大物」を釣り上げるまで、彼らは「信念」を持って「その時」をひたすら待つ。
自分が思い描いた「もの」を釣り上げる「夢」。
釣りに限らず、「夢」の無い人生は侘しい。
「Dreams come true」
有名なバンド名に成るくらい言い古された言葉だけど、本作を観ると信じたくなる。
イエメンの大富豪の「夢」からスタートしたプロジェクトは、夫婦生活が破綻しかけている水産学者のジョーンズ博士や、大富豪の資産管理コンサルタントのハリエットだけでなく、英国外務省まで巻き込んで展開していく。
初めは「バカげたプロジェクト」と断じて、嫌々携わっていたジョーンズ博士も、大富豪の人柄や考え方に惹かれるにつれて、前向きにプロジェクトに取組んでいく。
アムール・ワケドが演じた大富豪シャイフが魅力的だ。
どんな「事態」が起きようとも冷静で動じず、自分の夢や信念を捨てずに前へ進んでいく。
理論的に考え、一つ一つ確実に物事を進めていくが、どこか生き方が不器用な英国の「さかなクン」であるジョーンズ博士役のユアン・マクレガーが良い。
英国特殊部隊の恋人の安否に、千々に心が乱れるヒロイン、ハリエットをエミリー・ブラントが繊細に演じる。
そして本作の「笑い」を一手に引き受ける首相広報官マクスウェルを、クリスティン・スコット・トーマスが、思わず吹き出してしまうくらい強烈に演じている。
「火星に行くくらい」困難なことでも、強力にバックアップしてくれる人や、一緒に苦労して頑張ってくれるパートナーがいれば、立ち向かっていける。
中東問題という「きな臭い」背景を描きながらも、常にポジティブに展開していく本作品。
当初は作品タイトルから「おバカ映画」と早とちりしたが、鑑賞後はそんな思いも霧散した。
年度末に向かって慌しいなか、この作品は、きっとあなたに「ホッ!」とした一時を与えてくれると思います。