そのじつ

パフューム ある人殺しの物語のそのじつのレビュー・感想・評価

4.0
語り部の言葉と画面の深い明暗、ヴィヴィッドな色あいに誘われて、特異な生を受けたひとりの青年の人生を眺める事になった。

ベン・ウィショー演じるグルヌイユの、貧困に圧しひしがれたインドの苦行僧のような肉体が凄い。笑わない黒々した眉と目が印象的。本作ではハンサムとは言い難いルックスだが、不思議と魅力を感じる。

映像から五感を刺激する仕掛けがさまざまにあり、そのたたみかけるように投げかけてくる仕掛けが快く、自然とそこへ入ってしまう。
でも、匂いに関しては映像より文字の方が喚起力が強いと思う。目隠しした方が匂いを強く感じるなんて話もあるが、視覚に強く訴える物があると、存在しない匂いを想起する集中力が足りなくなるようだ。
だが匂いが喚起する「官能」はおそろしいほど感じられた。超接写で映し出されるものの肌合い、俳優たちの表情。匂いがなくとも補って余りある豊かな表現だった。2時間40分、これを楽しむ映画とも言える。

まるで寓話のような語りとシナリオの妙。
殺人を描いても血は見ず、死体は美しさを保っている。生きている時の泥で薄汚れた肌とは対照的な程。
クライマックスの絵的な見事さ、寓話性の高まり、哀切、混沌、どれもが見事な調和で集約されていて感動した。素晴らしい出来栄え!