このレビューはネタバレを含みます
まさに匂いたつような魅力。個人的には凄く好きですねー。
これ、働いてるシーンはともかくとして、主人公がほとんど喋らないんですよね。特に自分の心情的な面に関しては無いに等しい。なのに、ここまで主人公の心が流れ込んでくるとは本当に凄い。ウィショー君さすがですねぇ…。
この映画はかなり解釈のしがいのある、また人によって思うところの違うであろう映画だと思うので、ぜひみんなで語り合ってみたいですね。
話の中では、主人公と関わった人々はみんな次々と死んでしまって、最終的には主人公自身もすっかり“消えて”しまいます……人々の記憶からさえも。
主人公の存在が、生きた証が、きれいさっぱり全くの無かったことにされてしまうんですね。初めからこの世界に彼という存在が無かったかのように。
私はこれって、まさに“パフューム”だと思うんですよ。主人公が愛した“彼女”の匂いが、消えてしまったように。
匂いとは本来、時間がたてば“消える”ものです。主人公がこの映画の中でずっと追い求めていた目的……それは、匂いを“留める”方法を知ることでした。
彼は究極の香水を作り上げましたが、結局、あの時魂を揺さぶられた彼女の匂いは失われたまま、もう手に入れることはできません。
主人公にとって匂いは全てです。その人間の全てです。では、体臭のない彼自身は、彼にとって、存在する価値のない……いえ、存在すらしていない人間だったのです、初めから。そうして、最終的に自分だけでなく人々の記憶からも自分の存在をすっかり無かったことにして消えてしまった彼は、彼自身こそがまさに“パフューム”だったと。そんな気がします。