NAO141

舟を編むのNAO141のレビュー・感想・評価

舟を編む(2013年製作の映画)
3.8
第37回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ6部門の最優秀賞を受賞している作品。ノミネートには至らなかったが本場米国の第86回アカデミー賞には外国語映画部門の日本代表作品として出品された作品でもある。日本映画の良さを感じることが出来る作品で、派手さこそないものの、心に残る温かい気持ちになれる作品となっている。

タイトルの『舟を編む』とは「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味からつけられており、言葉通り辞書を作る人達を描いた作品である。メル・ギブソンとショーン・ペン主演の『博士と狂人』とも似ている作品ではあるが、本作の方が個人的にテイストとしては好み。

言葉はあらゆるものの源。
言葉が違えば見えているものも違う。
言葉が変われば考え方も変わる。
言葉は生き続け変わり続ける。
我々の思考そのものである言葉は文字として記録されていく。
辞書とは言葉の意味や語源を調べているだけではなく〈人類とは何か〉という究極の問いに挑むもののようにも感じる。

〈言葉〉とは我々人類そのものであり、多くの言葉が誕生し続け、多くの言葉が消滅し続ける。辞書というのは人類の叡智そのものであるが、人類が繁栄し続ける限り、そこには常に言葉が在り続けるため、〈辞書の完成〉というものはないが、我々を我々たらしめている言葉というものを編纂するということ、そのことがすでに偉業である。

終始静謐な感じの作品ではあるが、加藤剛と八千草薫という2人の大ベテラン役者が出演されていることで作品全体に安定感を感じる。
個人的にはオダギリジョー演じる西岡という人物が好き。チャラいけれど馬締のことを親身になって応援し、本気で辞書を作りたがっていた馬締のために自分が異動になり、さらにその後も宣伝部として〈大渡海〉出版への協力をする西岡。チャラいだけではなく自己犠牲をしながらも仲間を想う西岡、格好良いなぁ。
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