垂直落下式サミング

女子カメラの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

女子カメラ(2012年製作の映画)
4.0
大学の写真サークルに所属する女子四人組が、東京から大阪、鹿児島と、卒業旅行も兼ねて、それぞれの故郷の家族を尋ねていくというストーリー。
自分が世界と繋がっている実感は、ほんの些細な瞬間にこそ触れることができて、カメラを向けることでそれを確認することもできるのだと、温かいものをみせてくれる作品だった。
序盤、喫茶店で女子大生たちが喧しくおしゃべりをする様子が、結構長い時間をかけて描かれる。それからちょっとした喧嘩をするが、翌日になれば、みんなで写真を撮って、またご飯を食べてすぐに仲直り。この日常のスピード感についていけなかったが、この上っ面だけというわけでも本音だけというわけでもない友達との距離感は、わりとリアルな女子グループの関係性らしい(男も似たようなもんだが)。
主役の仲好し四人組を演じるのは、AKB48の光宗薫以外は知らない若い女優だったが、みなさん食欲旺盛でかわいらしい。行く先々でなんか美味しそうに食ってる。いっぱい食べる君が好き。
みんなで卒業旅行の資金を貯めていたが、管理していた子がお金をなくしてしまったので、仕方なく主人公のお兄ちゃんのワゴン車を借りて、いざ出発となるわけだ。
大阪では、ステレオタイプのわかりやすい浪花人たちが登場する。地元の内輪ノリを客観的にみてしまう感じで、ここだけ恥ずかしくてニヤニヤしてしまった。
そのあとは、鹿児島まであっという間にやってくると、なくしていたお金が見付かったからと、東京に残っていたはずの光宗が飛行機に乗って追い付いてくる。
ここで、お金ができたからみんなで飛行機で帰ろうかと、彼女等はお兄ちゃんに借りたワゴンをその場に乗り捨てる暴挙に出るが、こういういい加減で乱雑な遊びが許されるのも大学生までということか。
主演四人組のキュートさはもちろん、呑気なストーリーと呑気な音楽の心地よさ、友達として付き合ってきた時間の長さを感じさせるいい感じに力の抜けた衣服のセンス、それらがうまくマッチして、のんびりとした小規模旅行の空気感が全編を覆っている。何より作り手のささやかなカメラ愛が感じられ、なかなか悪くない映画だった。