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よく知りもしないくせにのshishiraizouのレビュー・感想・評価

よく知りもしないくせに(2009年製作の映画)
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だらしなさの極致。撮りかたも、人物のモラルも、会話の内容も、一本の映画としての流れも、意識してもそうそう出来ないというくらいだらしない。シーンごとに感情は途切れ、そのシーン内でも感情の持続が散漫に霧散してしまう。かといってエキセントリックなところもない、独特なアノミー文体。
その文体の、感情と感情の合間、倫理と倫理の合間を、すり減った軟骨の隙間に滑り込むように、シリアルキラーのごとく、柔らかい物腰で女に接近するクズ映画監督。ある種のサイコサスペンスか。ノースリーブや薄いTシャツの女性が彼と遭遇するたび、落ち着かない気持ちになる。男たちは石もて斧もて女を守らんとする。
なんともない居間のシーン、リビングのソファーにキム・テウが座って本を読んでいるところへ画面の端に雑にノースリーブの元彼女が入ってくる。ある種の精緻なホラー表現のさりげなさに、適当さをもって肉薄する。

終局。ふらりと入った定食屋で食事と瓶ビールを頼んでいる監督。 ポケットから出したグシャグシャの封筒のなかの金を伺う。幾多の映画の、釈放された懲役あけの男の仕草の反復に、“罪のその後”がある
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