とある大学の映画学科にて教鞭を取る元映画監督の教授・ジングとその恩師・ソン、そして二人と関係を持つオッキの三角関係を描いたお話。
初ホン・サンス映画。
韓国のエリック・ロメールと言われているらしいが、確かに不倫や二股みたいな込み入った恋愛事情や、時にディベートのようになる長い会話シーンなど、所々に同じようなエッセンスが感じられる。
ただ、そういうドロドロした関係についても妙に渇いた目線で描いていたロメール作品と比べると、どこか情念が入り混じったところがあり、その湿っぽさがちょっと苦手だったかも。
時系列が前後するくらいで下手な飾り付けのないシンプルな映画ながら、何となく普通じゃない空気が漂っていて目を惹かれてしまうところはあった。具体的に言語化するのが難しいんだけど、最後まで物語の軸が見えてこない感じがあり、こちらに核心を掴ませないような独特の浮遊感が他にはなかなかない雰囲気だったのかも。
韓国映画というとやたらとバイオレンスな映画ばかり観ていたので、血も死人も出ない今作はそれだけで新鮮だったかも。
(2021.87)