maverick

次の朝は他人のmaverickのレビュー・感想・評価

次の朝は他人(2011年製作の映画)
4.0
ホン・サンス監督作品。
この監督の作品で興味を引かれるものはたくさんあるのだが、『よく知りもしないくせに』と本作とで、まだ2本しか観れていない。
作品性がはっきりしている監督なのかな。日常を切り取り、そこに人生を感じさせるような良い作品を撮る監督という印象。

本作の最大の特徴はモノクロ。日本でいえば、昭和初期の頃の映画を彷彿とさせる哀愁が表現されている。
一人の映画監督を主人公に、久しぶりにソウルを訪れた男が旧友の映画仲間や昔の恋人と会う姿を淡々と描いている。日常風景をただカメラを回した作品と錯覚するほどにリアル。自主製作のような雰囲気もあるが、登場人物らが道端や酒の席で言葉を交わす中に、それぞれの人生を感じさせる。深みがあり、あぁ良いなと思える作品だ。多くは語らない主人公がまた良い。これまでにいろいろあったんだろうなと。映画監督という職業柄がにじみ出ており、そこもまた味。分析からくる主張がしっかりとしており、彼の言葉はどれも「なるほど」と思わせるものだった。そんな的確な分析が出来ても、自身の人生は上手くいってないところがまた人生の面白さ。哀愁漂うちょっと情けない主人公が良かったな。

後半ちょっとこんがらがって、いまいちよく分からない内容だったのが気になった。作品解説とか見ればすっきりするかな。
けどこの監督の味、すごく好きだな。サクセスストーリーとか、底辺の生き方だけが作品の題材じゃない。一見普通の人の人生にも、いろんな味わい深さがそれぞれにある。この監督は、そんな様々な人の人生に興味が持てる人なんだろう。有名な人の半生ばかりがドラマじゃないと。他の作品も興味が沸いた。ホン・サンス、要注目な監督ですね。
maverick

maverick