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レ・ミゼラブルのYYamadaのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)
3.8
【戴冠!ゴールデン・グローブ賞】
 ~オスカー前哨戦を制した作品たち

◆第70回(2012)G.グローブ作品賞受賞
 (ミュージカル・コメディ部門)
◆同年のアカデミー作品賞
『アルゴ』

〈見処〉
①文藝古典の名作「ミュージカル」を
 完全映画化
・『レ・ミゼラブル』は、2012年に製作された、米英合作のミュージカル映画。監督は『英国王のスピーチ』でアカデミー監督賞を受賞したトム・フーパー。
・舞台は1815年のフランス。1切れのパンを盗み、19年も徒刑囚となっていたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、刑期を終えて仮釈放の身となるが、仕事にありつけず、再び盗みを働いてしまう。
・ジャンは、罪を見逃してくれた司教に感銘を受けて改心。やがて運命的な出会いを果たした女性ファンテーヌから愛娘コゼットを託されたバルジャンは、執念深いジャベール警部の追跡を逃れ、パリへ。バルジャンとコゼットは親子として暮らすが、やがて激動の時代の波に飲まれていく…。(eiga.comより抜粋)
・フランス文学の巨匠、ヴィクトル・ユゴーによる原作は、1862年に出版以来、本国フランスでは聖書に次いで売上げを誇る古典名作。厳密には、本作の原作は1985年10月にロンドン初演のミュージカル版。本作のストーリーは小説版とは細部で異なるそうだ。(内容未確認)。
・舞台ミュージカルを原作としながらも、本作は、リアリティーの高い演出やセットが印象的。スタジオ録音を行う一般的なミュージカルと異なり、本作は俳優が撮影時に歌唱している。
・世界的にヒットした本作であるが、とくに「ミュージカル大国」である日本では、累計興収は55億円を突破し、日本公開のミュージカル映画歴代1位を記録している。

②時代背景を理解する
・フランス人にとっての「忠臣蔵」、「レ・ミゼラブル」の舞台は、フランス建国史上もっとも多難な時代。
・1789年のフランス革命以降の混乱期を静めたナポレオンは、1804年に皇帝に即位も政情安定出来ず、1814年に退位。本作の物語で描かれた1815年には、ルイ18世による第二次王政復古を許している。
・フランスでは、シャルル10世即位(1824年)以降も、特権階級への優遇政策が続き、1832年6月には本作のクライマックスとなる、パリ市民による王政打倒「6月暴動」が発生。
・その後1848年には、普通選挙を求める民衆蜂起によってルイ・ナポレオンが大統領に当選、更に権力を掌握するため1851年に国民議会に対するクーデターを起こし、1852年には「皇帝ナポレオン3世」に。原作者ユゴーは、ナポレオン3世が起こしたクーデターに少数の議員たちと抵抗するが、弾圧を受け、ベルギーに亡命。そのような環境下で描かれた原作であることを理解して鑑賞したい。

③結び…本作の見処は?
○: ほぼ全ての台詞が歌唱であるが、キャラクターの内面を歌に乗せ、非常にわかりやすい。文藝大作とミュージカルの相性の良さを感じることが出来る力作。
○: 非常に生々しい舞台セットや衣装。リアリティーの高い演出にて、ミュージカル嫌いな人にも、鑑賞出来る仕上がり。
○: 『ダークナイト・ライジング』と同じ時期に撮影された本作のアン・ハサウェイは激スリム。出演時間はごく僅かであるが、渾身の演技を見せている。
▲: 上映時間が長く「この歌唱パートいらないのでは?」と思ってしまったのは自分だけだろうか?
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