yukihiro084

レ・ミゼラブルのyukihiro084のレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)
4.8
YouTubeでよく見かける(THE FIRST
TAKE ファーストテイク)は
アーティストによる一発撮りでの
パフォーマンスがルールらしい。

事前録音のリップシンク(口パク)では
なく、撮影の本番で俳優たちに歌わせた
本作は、もちろんリハーサルやらテイク
を重ねたりもあったろうから、一発本番の
一発撮りって訳ではないだろうが、
それでも、その全身全霊の、魂のパフォー
マンスは、観る者を圧倒し続ける。

息遣い、悲しみ、嘆き、諦め、
失望、怒り、熱量、絶望と再生。
感情の赴くまま歌ってゆく。
テンポやリズムや声の強弱は
歌い手に委ねられている。
俳優の表情や感情を逃さないように
アップの撮影が多用されている。

アン・ハサウェイの(夢やぶれて)や
サマンサ・バークスの(オン・マイ・
オウン)の熱唱も見入ってしまうが
僕は冒頭あたりのヒューによる
(バルジャンの独白)のパフォーマンスに
圧倒されてしまう。

絶望の淵にある男の悲しみや苦悩や
演じながら歌いあげるヒューの
パフォーマンスはもっと評価されていい。

ヒュー・ジャックマン。元々、舞台で、
ミュージカルで評価された人だ。
世界的に有名になった(オクラホマ)。
語り継がれるアカデミー賞の司会の
オープニングアクト。
マッチョな鉄の爪男を演じる前から、
彼は大舞台で何度も歌ってきている。

絶望にあるヒューを救う神父を
レジェンド的なジャンバルジャン俳優を
キャスティングしていたりとか、
(民衆の歌)で市民で歌いあげるシーンは
長い間、レミゼラブルを支え続けた
レミゼラブル俳優が集結しているとか、
そう言うエピソード一つ一つもグッと
くる。それはもう総力戦と呼んでいい。
レミゼラブルに関わった(全ての人たちの
願いや想いを詰め込んだ)映画化だった。

エディに振り向いてもらえない
エポリーヌ役はテイラー・スウィフトが
有力だったが(テイラー・スウィフトが
振り向いてもらえないなんて、考えられ
ない)と決まらなかったエピソードも
面白い。

ラッセル・クロウのキャスティングも
一見不思議に思うかもしれないが、
ラッセルとヒューは同郷なので仲がいい。
ウルヴァリンをオファーされたラッセルが、
役をヒューに譲ったこともある。ヒュー
にとっては、ラッセルは間違いなく恩人
だ。偶然なのか、巡り合わせなのか。こう
やって2人は大作ミュージカルで共演する。

ジャンバルジャンを救うことになる
大切な、でも小さな命。コゼット。
ジャベールに気付きを与え、立ち止まらせる
のも、やはり、小さな命だった。
その対比がとても悲しく、切ない。

当時、映画館で。
会社をやめて半年が経っていた。
仕事は少しずつ動いてはいたが
それでもほとんど無収入だった。
映画が僕らに与えてくれるもの。 

(民衆の歌)は簡単に心に届いた。
今度は僕が誰かの心を震わせたい。
そんなことを思ったりもした。

(シカゴ7裁判)のエディと
サシャ・バロンを見て、あれ?この2人、
レミゼラブルで共演してたよなと再鑑賞。
エディとサシャ・バロン、
そして、その頃の自分にもまた会った。
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