くりふ

ボス その男シヴァージのくりふのレビュー・感想・評価

ボス その男シヴァージ(2007年製作の映画)
4.0
【悶絶ラジニ祭】

例によって3時間ものなので躊躇してたんですが、『レ・ミゼラブル』が合わずミュージカル不全を起こしてしまったので、ラジニに救ってもらおうと行ってきました。

いやあぁぁ大当たり!3時間あっちゅう間の目出度さで、こっちが正月映画みたい。レミゼに感謝(笑)。『ロボット』以前の作品ですが、こちらの方が面白…というか悶絶しました。

『ロボット<完全版>』もよかったのですが、バカCGが期待ほどではなく、ネタ的に観客に説明要るせいか、その分、炸裂度を今一つに感じてました。対し本作は、いつもの怒涛のラジニ映画。ラジニ神話をどうデッチ上げるか?そこだけに集中していてバカ天井知らず。ラジニ・アイコンでも遊びまくり。

シャンカール監督×ラジニは本作が初で、監督はずっとこれを企んでたとか。

もちろん本作は、パイナップルに梅宮辰夫の顔貼り付けて黒く塗ったような、あの暑苦オヤジの受け入れ方次第で評価ちゅうかノレるかも変わりますが、自己チューの権化を正義漢で中和したようなこのキャラ、私は憎めません。ナルシズムの足腰も強すぎて、もう笑うしかないやって諦めもつくのです。

だから幾つも仕込まれたセルフパロディも、けっこう楽しんじゃいました。特に、予告にも出る「ただのハゲじゃない!」は、事実に基づき清々しい!(笑)これまた、死と再生という英雄神話にも沿ってますね。錯覚だけど感動!(笑)

2007年の作品ですが、アメリカでIT長者となり帰国って、いかにもでした。で、庶民から生まれたスーパースターは、決して庶民視点を忘れませんね。

「インドは貧困じゃない、一部の金持ちが独占するからだ!」なんてやっぱり、カーストの影響が根強いだろうインドの格差社会では、切実に響くのでは。物語の根にこんな所があることが、建前としても厭味じゃなくて気持ちいい。

悪役が今一つな感はありましたが、その分ファミリーの底抜け感がお見事。相棒役のツッコミレベルが凄くて、タミル語判らないのについ、笑っちゃう。

シヴァージは、インドの名優シヴァージ・ガネーサンがモデルだそうですね。名前だけ覚えありと思ったら『パダヤッパ』の父親役。仙人的な濃さでした。

で、肝心のヒロイン、シュリヤー・サランさん、一見地味かと思ったら…輝く肌見せ踊り出せばもう化ける化ける!文句なしの新ミューズ誕生だ!アイシュさんの濃厚とは違う、爽やか七変化エロスに溺れまくりました。腰が凄いです!…と書くといやらしいですが、ダンス、ハンパないです。

大ざっぱに思えて、細部で凝ってるのも見どころです。マイコーなみに、ラジニ美白となる!苦笑ネタも出てきますが、白人女性にラジニと同じ動きをさせ、その肌をマッピングしてるんですね。これは後から知って驚きました。神話捏造のためにそこまでするか!(笑)

私は本作で、ラジニ映画はまだ7本ですが、印象からのランクだと、主人公の底抜け感と、敵役の悪女が凄かった『パダヤッパ』が一番で、本作はその次くらいの面白さです。でも劇場で見た分、本作の方が楽しい!

出演作は150本あるとか言いますから、まだ宝の山(多分)テンコ盛りですが、今後も日本では、ほとんど見られないでしょうね、ちょっと残念ですが。

ラジニに限らず、インド映画はもっと入って来て欲しいですね。ビジネスでも、インドがハリウッドに出資するようになっていますが、窒息寸前のハリウッド映画より、ずっと元気があるんじゃないでしょうか。

何でもマサラムービー、と一絡げに思い込まぬよう反省すべきはして(笑)、様々なジャンルの作品をみたいです。…商売としては難しいのでしょうけど。

<2013.1.7記>
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