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アルバート氏の人生のLUXHのレビュー・感想・評価

アルバート氏の人生(2011年製作の映画)
4.1
最初にあらすじwikiを見ています。(その方がオススメかも)この作品は後天的、トラウマとなるような外的要因から男として生きることを選択した女性を描いていて、先天性であることが強い作品群の中で新鮮な印象を受けた。失意の先に男性のふりをして社会へ飛び込むという点でうまく行き、その小さな小さな達成感の積み重ねが彼のアイデンティティを形成していったのだろう。顛末を思うと悲しく小さな嗚咽が出て直視できなくなります。

マイノリティどころか恋愛はもとより真実を知る友人もおらず孤独に生きてきた彼にとって、同じように生きている人がいることでどれだけ希望を見出せるようになるか。自分もあの人のように妻帯して小さな夢を叶えられるかもしれない、淡い期待を抱くのも当然のこと。時折綺麗な瞳で遠くを見ながら素敵な未来を夢想するシーンは純潔で心が苦しくなるばかりだった。なにから取っていえばいいかわからない位、寂しさを感じさせないのに彼女はどこまでも価値観から境遇から、環境から孤独で心が痛い。

悪者扱いされるジョーも、ジョーなりの背景があり、頑なに親になれないなりたくないという気持ちはコンプレックスがある人にしかわからない拒絶反応というものがある(軽率な人物だとは思うが彼の人生観というものにもある種輪郭がきちんとできている作品だと思う)。さて、LGBT映画といわれる括りの多くは好みでなかったりする。私自身がグレーで、なんだかお飾りや流行みたいな作品が散見していて理解が深まるような映画には思えないことが多いからだ。

観るか迷ったが、あらすじを読んで、鑑賞を選択してよかった。アイルランドの映画はいつもなんだか孤独で、派手なドラマはないけれどもそっと各々の心のページを滲ませる、そんな映画が多い気がする。
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