Stella

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のStellaのレビュー・感想・評価

5.0
とても綺麗な映像と迫力ある3D。CGとリアルがほぼ融合出来ていた作品だと思います。生き物と自然の美しさ。虎がかなりリアリティあって、ネコ科の動物って凶暴でも、可愛いんだよね~と思ってしまう。この映画、76日間実際に漂流した方の助力で、遭難した時にどうやって生活をしていたかが再現されていました。


星空も、海のシーンも若干、ファンタジックなんだけどリアルと乖離しすぎるわけでもなく、程よい距離感で楽しめた気がします。

特に水に対する拘りをとても感じ、海のシーンはもちろん、人が水に飛び込み泳ぐ姿を追いかけ、水中から水面を映したり、撮る角度を変えることで立体感が出て、更にそれにCGが加わって、終始見ていて飽きない映像になっていました。

そして、哲学的な要素が大きかった。
生きること、食べることは命を奪うこと。弱肉強食の世界。人間の極限状態での行動。
宗教、信仰。

最終的に問われたことは、思いもよらないことでした。
3Dで見るのがおススメです!


ネタバレ✂︎---------------------------

ここから、中身にもっと触れていきます。見る予定の方は見てから読んでね。

パイというのは少年の名前。動物園を経営する父のもと、母と兄とインドで暮らしています。


前半部分はタイタニックと同じような(ジェームズキャメロンがこの映画を誉めてるだけに)彼の生立ちの話。

幼い頃に、トラはとても凶暴であると教えられる。


パイは、宗教に興味があり、色んな宗派を試す。それもまた、この話の芯。

彼ら一家はある日、カナダへ移住することになります。多分、動物園はやめるんだけど、動物は売るために一緒に船旅。

家族はベジタリアンだから、
☆同じ船で乗り合わせるコック(ベジタリアンだから肉じゃないものを・・みたいなことを言うと凄いいじわるを言われる。)

☆アジア人の船乗り(僕の信仰は仏教です。この豆のカレー美味しいです。豆だから食べれるよ。という様な事を言ってた。)でも、お母さんは食べなかった。それは、コックとのやり取りからか、肉のエキスが入ってるものも食べないからなのか・・・。


その道中で船が転覆。ここから一気に話は展開していく。

パイはボートに足を怪我したシマウマ、ハイエナ、オランウータンと乗り合わせ・・(ってかなり強引な感じだけど)ハイエナがまず、足を怪我したシマウマを襲う。次にPiが狙われるとそれに対して怒ったオランウータンが襲われて半死。

そこへどこにいたのか、カバーの中に隠れていたベンガルトラがハイエナを襲う。虎の名前はリチャードパーカー。この名前も後で、調べると興味深いことが発覚。


トラとパイの奇妙な遭難生活が始まります。

トラはシマウマ、オランウータンも食べてしまいます。その後、どうしたって狙われるのは人間である彼

2人が一緒の船で共同できるはずもなく・・パイは、浮き輪や救命具で作ったいかだのようのものをボートに括り付け、つかず離れずの暮らしをします。

雨水や魚をゲットしたら、リチャードパーカーにも与えるパイ
これは自分が食べられないようにと、やはり見殺しには出来ないというパイの優しさと愛情

そして、そう言った者は最終的に救われる。というような…


船が通った時には、狼煙や空砲で存在を示してみたり、木を削って銛を作り、魚を釣って、雨水を貯めて飲んで、漂流日記を書き、同じ船に乗れるように虎も手なずけようと試みたり・・・。

光るクラゲの大群。

クジラの親子のジャンプ。

トビウオの大量発生。

2人が見る夜空の星。

空が水面に映り、どこが水平線かもわからないような映像がたくさんあり、とても魅せられます。


海の中に宇宙そして、記憶を見る。頭の中の映像を具現化する、そして生き物の世界と繋ぐ。
とてもイメージあふれる描写。

虹色に輝く魚が絶命した時、色を失っていく表現。

ベジタリアンの家庭で育てられた彼が、目の前で動物が殺されたり、生きることは食べること。と神に感謝しながら生きながらえる姿。

このサバイバルの中で綺麗ごとなんて無く、ただ、できることは全てする、食べれるものは食べる。シンプルな欲望を満たすことだけ。彼自身も今は虎のようになって生きていくしかない。

やがて、一つの島に辿り着く。
そこはたくさんのミーアキャットが生息する島。そこは、島が人を食べてしまう島だったの。

植物の中に人間の歯があり、多くは語られなかったけど、この広い世界の中にこんな島があるのも不思議ではない。と言えるような、恐怖とワクワクでドキドキしてしまう島の存在。
世界も宇宙も歴史も芸術も未知の世界というのは、とてもExciting!!!

パイはその島の真実に気付くと食べ物を調達してリチャードパーカーと共に離れる。

そして、その島は遠くから見ると人の形をしていた。


最後の嵐の後に、流れ着いた島で、彼からリチャードパーカーは離れて行ってしまう。そして彼は救助される。
彼はリチャードパーカーが最後にこちらを振り向きもせずに、何の余韻もなく、ジャングルに入っていってしまったことに対して泣いていた。ように見えた。

で、ここから話はひっくり返る。


日本人の記者にこの話を尋ねられるパイ。ここで日本人が登場というのがまた面白く、アメリカ人の日本人に対するイメージって、[現実的]なのかな?また、拙い日本語なんですよ。これがまた。完全に他のアジアの人じゃん!

パイが発見された島のジャングルから虎は出てきませんでしたよ。と記者。
本当の話が聴きたいんですけど・・。って。


!!!!?

えー!今の話ってFakeなの?

そして、彼が話し出したのは、4人で救助ボートに乗り合わせたという話。
最初に出会ったコックと、アジア人の船乗り、そしてパイの母親。

そうです。ハイエナはコック、船乗りはシマウマ、母親はオランウータン。ということは、パイ=リチャードパーカー。

おぉ!!
どちらを信じるかはあなた次第。というようなこと?人は見たい物しか見ないし、聞きたい物しか聞こえない。真実とは事実ではなく、解釈である?

この話には宗教が絡んでいる。信仰した者のみ、救われる。ということなのかな。でもそれって現実逃避じゃない?現実に耐えられないから他の物で替りに・・・。エヴァで残虐なシーンに童謡を流すような・・・。
この考えがもう既に無宗教の多い、現実的な日本人なのか。それも伝えたかったことの一つだったなら、すごいな。

あたしは現実的な宗教を必要としない派の日本人であることを再確認してしまっていいのかな。
でも、生きること、食べることで思う所はあるよ。

ラストシーンのからくりにびっくりしていろいろ思い返すのが楽しかった。
とても哲学的だったな。という感想。
あのトラは、パイの心だったんだね。

極限状態で人間らしさとその中に潜む動物の部分。自分の葛藤があって、必死に生きようとする自分と、生き物を殺めてまで食べないという親の教えと、料理されて出てくるものではなく、自分の手で殺して食べなければいけないということ。

それから、手なずけさせようとしていたのは自分を食べてしまわないように自分の身を守っていたのかな。とも思った。。


リチャードパーカーが離れていったのは、助かってアニマルな自分が必要なくなったからなのかな?人間に戻ることが出来る。あの涙の意味をいまだに考えてしまう。


リチャードパーカーについて。
これ、リンク押せないんだよね。なのでコピー貼り付けか調べて見てください。
http://www5b.biglobe.ne.jp/%257emadison/murder/text/mignonette.html
http://www.kjsei.net/example/01.html
作者がこの名前を付けた意図がわかるよね。

最後の最後でぶわっと思い出して、余韻とそのあとの会話がとても弾む映画でした
Stella

Stella