こたつむり

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.0
★ 人生とは円周率のようなもの。

子供の頃から僕の主戦場は想像の世界。
ゆえに江戸川乱歩先生の「うつし世は夢、よるの夢こそまこと」は金言でした。自身を肯定してくれたように感じたのです。

だから、昔から“物語”も好きでした。
剣と魔法の物語も、探偵と犯人で構築された物語も、異形たちが闇の世界で蠢く物語も。“知的好奇心”を満たしてくれるのなら、ジャンルに拘りなく楽しみました。

そして、本作も同様に。
ガンガンと“知的好奇心”を刺激してくるファンタジーだったのです。物語としては(副題にもあるように)トラと漂流する…という部分が主軸。しかし、根底には“宇宙の深淵を覗くような真理”が横たわっていたのです。

何処までが現実で、何処までが幻想なのか。
その境界線は曖昧で朧気。立ち上る香気はスパイシーでスイート。まるで神の手の中で遊ばれているような…そんな壮大な作品なのです。

その世界を構築するのが美麗なる映像。
これはCGが発達した現代だからこそ編み出すことが出来た物語ですね。トラもイルカもトビウオも荒れ狂う波も。実際に存在するのはどれなのか…全く判らないのですからね。見事な限りです。

それと、主人公の相棒になるトラ。
これも僕の中での高評価に繋がっていると思います。威厳と恐怖と“可愛らしさ”を備えた陸上動物としては最適の存在ですからね。…このことを家族に言ったら「おまえはアホか」という視線を浴びたので、一般的な視点ではないと思いますけど。

まあ、そんなわけで。
リアリティではなくファンタジー。
そう思って鑑賞したほうが楽しめるサバイバルの物語。

勿論、その先に在るのは哲学と宗教観。
だから、子供には難しく感じるかもしれませんね。でも、鑑賞後に大人が解説してあげれば…あるいは色々なことを話し合う機会になれば…きっと、本作はもっと素晴らしい物語になると思います。

何しろ、映画は鑑賞した時点で製作者から手を離れ、観客の物になるのですから…どのように解釈するも自由ならば、楽しんだもの勝ちですよね。
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