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ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のtoncoのレビュー・感想・評価

4.1
こりゃあスゴい作品だ。唸る。
もう1回見たい。いや見なければ。
「鑑定士と顔のない依頼人」のような、人によって解釈が変わる映画は大好物なんだけどまさにこれもそう。

サバイバル映画でも、虎との友情物語でもなかった。予告や広告からは想像もつかなかった。
「少年はなぜ生き残れたか?」のコピーは、想像を越えて深かった。

宗教はなぜ生まれたのか?
宗教とは何か?人は何によって救われるのか?

大枠でいうとそんなとこ?

インド映画「PK」がその問いへの解を、宇宙人の視点でコメディタッチに展開していたけど、本作はそのテーマを、圧倒的に美しいCGと、数々のメタファーで表現する。
考察サイト読むのがめちゃ楽しいスルメ映画!!



鑑賞してる方も多いので、ここからはネタバレ含む感想で…





つまり、殺人と食◯を犯してしまった主人公のパイが、自分の罪の意識に苛まれ、抗い、時に受け入れようと葛藤していく、その彼の心こそが虎の姿としてあらわれてたんですね。

全く友情を育めなかった虎との関係は、パイにとって自分が犯した罪が、耐えがたいもので到底受け入れられない、拒絶反応を示し続けている様子をあらわしてるんだろう。
船の布の中に虎を追いやったのは、最初は単に救命道具を確保するためと思っていたが、なるほど、自分の罪に蓋をしたかったという描写か。

しかしどれほど耐えがたい227日だったろうか。
最後のあっけない別れは何を意味するのか。パイが、信仰によって救われた描写なのか?
それとも一生自分を許してはいけない、背負っていけ、というメッセージなのか?残酷な描写のようにも感じた。

PKの時も思ったけど、これは、宗教についてもっと知識があれば何万倍も楽しめた映画だろうな。
とりあえず1回の鑑賞ではすべてのメッセージを理解したといえない。

虎の名前のもとになった史実の論争とかも踏まえてからの方が楽しめそう。窮地における食◯の考えは、永遠に答えが出ない問いなのかもしれない。
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