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ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のEditingTellUsのレビュー・感想・評価

4.5
脚本と監督の表現したいことが100%マッチした極上の作品。
リリースされた時期となんか有名すぎて見る機会を失った映画作品で、1本や2本ありませんか?私に取ってはこの作品がそうでした。当時は最先端のVFXを使った美しい映像ということで、ニュースで大きく取り上げられていたことを覚えています。でもなぜか観るのが後回し後回しになって、あんまり、絶賛の声も聞かなかったので、今の今まで観ていませんでした。しかし、蓋を開けてみる、めちゃくちゃ良質で大好きな作品でした。

まず、一番最初に話したいのは、VFX。この当時は、Avatarなどが公開された時期でもあり、空前のVFXブームでした。(今もそのブームはどこが残っていますが。)この作品の8割を占める戦場でのシーンは、ほとんどのVFXショット、トラなんかも全てVFX.ここで話したいのは、そのVFXの質が高いということはもちろん、数段レベルの上がっている現在2019年に観たとしても、その違和感を感じないVFXの使い方。一言に言ってしまえば、パイの夢の中のような話なのですが、その話は後にしておいて、その夢の中のようなファンタジー世界という一枚の壁を取り払い、現実と夢の世界が区別できなくなるような世界を作り上げた上で、VFXでさらにその幅を増幅させている。まるで、美術館に行ったような感覚。我々なんかでは、到底理解できないような芸術の歴史は置いといて、世界の芸術作品に囲まれている空間というのが、自分がとても小さく感じるぐらい、広い広い世界がその作品にはあって、その奥行きさえも感じてしまう。大きくいえば宇宙を感じる時間。それをこの映画では感じることができました。

その夢の中という話ですが、主人公のパイはインドで3つの宗教を信仰しながら、円周率πの桁を無数に覚えるという変わり者。宗教と科学。これが1つのテーマ。昔から大きな対立を生んできた両極とも言える分野。そしてもう1つのテーマが大人と子供。その中でも子供の好奇心、可能性、未来を中心に描いています。パイは好奇心から、3つの宗教を信仰しながら、聖水を飲む禁忌を犯してしまう。いじめられながらも円周率をめちゃくちゃ覚えて学校のスターに。まさにテーマにぴったりのキャラクター。そのパイが漂流して、トラのリチャードパーカーと船上で生きのびるストーリーなのですが、その世界はまさにファンタジー。とても美しい空や海。波と共に訪れる多くの生き物たち。流れ着いた島での木々やミーアキャットの大群。どれも現実とは信じがたいものばかり。最後に救助された時に日本人ジャーナリストは彼のストーリーなんてまったく信じない。ぁれらがも止めているのは、読者が信じられる真実っぽいこと。しかし、子供というのは実際に現実とは信じがたい経験をしています。初めてのことは常に冒険で、毎日が自分が主人公の物語の1ページなんです。それが好奇心を触発し、夢を作り、芸術の礎を築き、成長していきます。その無限大の可能性を秘めた時期の唯一無二の感覚が、VFXを使って太平洋の上のポツンと浮かぶ一隻の船の上で描かれます。
その美しい光景には理由なんて必要ない。感じたことが正解なんだから。映画を観ているときもまったく同じ感覚。視界を埋め尽くす超現実的な映像と、耳に届く音を吸収し感じるだけで十分。その考えるスペースを自分の世界との架け橋として使い、超現実と現実とを溶け込ませる時間。この時間が映画体験。1800円の価値以上のものがあるところです。そして最後にトラのリチャードパーカーがとった行動はとても悲しい。いつかは好奇心よりも社会性、人間性が勝ってしまうときがくるのだと。

完璧。アンリー最高。