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ジャンケン戦争のALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

ジャンケン戦争(1971年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『寺山修司実験映像ワールドVol.1』収録作品。2人の権力者、あるいは国家間の闘争、戦争をジャンケンを用いて表現している。
2人の男は軍服を着ている。片方はナチス・ドイツ、もう一人はどこの国だろう。両者ともズボンを着用せず、白ブリーフ一丁のなんとも間抜けな出で立ちである。その2人が廃墟で勢いよくジャンケンを始める。負けた方が拷問に近い苦痛と屈辱を伴う罰を受けるという単純なルール。それを破れた窓の外から数人のギャラリーが見つめる。疲れ果てた2人。だがどちらかが力尽き果てるまで、この無意味とも言える戦いは続く。最後、敗れたのはナチス。
セリフなしでここまで、政治的な思想を声高に、力強く映像だけで主張できた作品も珍しい。「言葉の錬金術士」と寺山は評されるが、彼は言葉がうまいのもあるが、自分の中の思いを伝える、表に出すことに非常に長けた人物であることが窺える。
途中、BGMとしてヒトラーの演説が流れる。『トマトケチャップ皇帝』の玉音放送でも感じたが、この音声とともに何が映っているかで、その音声は本来の意味とは乖離してまったく違った意味、含みを持つ。それが図ったことか図らずかは別として。この作品からは戦争という暴力の否定と、映像の暴力性という二つの主義主張が分かる。
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