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シュガー・ラッシュのRenのレビュー・感想・評価

シュガー・ラッシュ(2012年製作の映画)
4.5
「圧巻の伏線回収」「細部にまで詰め込まれた遊び心とイースターエッグ」で頭一つ抜けた傑作。劇場鑑賞時からずっと好きだけど、やっぱり完成度が高い。なんとなくで観ないのは勿体無い!

問答無用でわくわくしてしまうアーケードゲームの空気感は今更褒めるまでもなく素晴らしい。レトロでシンプルな "Fix-It Felix"、現代的なFPS "Hero’s Duty"、ポップなレースゲーム "Sugar Rush" の3つの全く異なる世界観がダイナミックに交差していく興奮は何物にも変え難く、CG技術の発展の恩恵とプロの脚本術を感じる。

全世代の人が様々な見方で楽しめる映画。
まず「ラルフとヴァネロペ、ラルフとフェリックス友情の話」が一層目の楽しみ方としてある。前者は異なるゲームだけど似た境遇の2人、後者は同じゲーム内で異なる性格と居場所の2人として、彼らがすれ違って/分かり合っていく展開はファミリー映画としてベタで観る人を選ばない。

そして二層目に「自分の役割や居場所を肯定する人生讃歌」としての楽しみ方がある。今の自分の存在を、諦めでなく前向きに受容する自己肯定としての成長。
もっと言えば、誰にとっての正義でありたいかに向き合うための物語。1人のヴァネロペのために奮闘しマイノリティに手を差し伸べるラルフ(冒頭で失業したキャラに声をかけるのも彼)との対比で、ゲームの世界のために1人の犠牲も厭わない某キャラクターが出てくる。それらを経てラルフもヴァネロペもフェリックスもカルホーン軍曹も人生の目標/支えを獲得していく。
オープニングとエンディングで、一人を除いて何か見た目で分かる変化が起きたわけではないのが面白い。各々の心情変化がドラマになっている。

正義と悪は表裏一体なのではないかという話で、喜びと悲しみの連続性を描いた『インサイド・ヘッド』にも似た「二面性」の作品に思えた。それを難解にせず可視化した素晴らしい映画だと思う。

その他、
○ 拍手喝采レベルの伏線回収が数回ある。一方で、絶対これはやるだろーという予想は外してくる。
○ ヴァネロペのパーカースタイルが可愛すぎて大騒ぎしてまう。原宿kawaiiスタイルモチーフ。諸星すみれの声も天才的。
○ 冒頭から聞き慣れない単語が当たり前のように出てくるけど、鑑賞中に不安になってググらないように!
○ マクロ的に観た時に、一番舞台の小さなディズニーアニメ作品な気がする。

こんな映画が好きな人に
○『トイ・ストーリー』シリーズ
○『フリー・ガイ』

【余談】今作辺りから、ディズニー作品のエンディング曲がごりごりに間口を広げたメジャー路線になっていった気がする。今作はOwl CityやAKB48が担当(AKBの挿入歌『Sugar Rush』は全世界共通)、以降ディズニー作品のテーマソングをFall Out BoyやShakira、Imagine Dragonsなど名だたる人気ミュージシャンが担当していく。まあ10年以上前に『ターザン』でPhil Collinsがやっていたりしたので結構テキトーな推定だけど。
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