真田ピロシキ

シュガー・ラッシュの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

シュガー・ラッシュ(2012年製作の映画)
3.9
このストーリーには思うところがあって生まれつきの属性からは逃れられないとされている点にはやや納得が行かない。謂れのない冷遇をされて心が傷ついているラルフと現実の差別が重なって見える。周りを見返してやろうとした行いが結果的に自身の世界を危機に追いやったラルフに対して「約束通り眺めの良い部屋をやるよ。君は満足かい?」と皮肉を言われても、お前がラルフにもう少し優しければそもそもこんなこと起きなかったんだよと言いたくなる。悪役カウンセリングに通っての意識改革が必要なのはラルフではなくアパートの住人の方で、最終的には上手く運んだとは言えその辺はモニョる。

だが無理して自分ではないものに変わろうとしてもロクなことにならないというのもその通り。大切なのは自分がどの位置にいるかではなくどう考えられるかで、プリンセスの記憶を取り戻したヴァネロペがあくまでそれは設定だからとドレスをすぐに脱ぎ捨て民主的に歩むのは現代的なストーリーとして相応しい。立場は決まっていても思考や行動までそれに沿わなくても良い。周囲からの見られ方に自分を左右してしまうことはよくある事だが、悪役であっても誰かのヒーローになれたラルフにはそうした戒めから逃れる希望がある。何度か見てみると初公開時の予告で物議を醸した悪役カテゴリーのザンギエフも納得できてきた。ストリートファイターをやってない人には悪役にしか見えないであろう彼が同じように偏見に苛まれているラルフへアドバイスをした事に意味を感じられる。

ピクセルもレディプレイヤー1も全く評価していない面倒くさいゲーマーの自分であるがこの映画は好き。他作品のキャラクターが一切いなかったとしても本作は揺らがない。ラルフとヴァネロペ、フェリックスとカルホーン軍曹は借り物の世界におんぶ抱っこされるような安い奴らじゃない。オリジナルがしっかりしてるからコナミコマンドやエンドロールのパロディにも好感が抱けるものですよ。続編はディズニープリンセスが勢揃いするようですが、他作品のキャラクターを出しただけの映画にはなっていないことを願ってます。