Iri17

シュガー・ラッシュのIri17のレビュー・感想・評価

シュガー・ラッシュ(2012年製作の映画)
5.0
全ての「不具合」を持つ人たちの物語。

アーケードゲームの世界が舞台だが、これは近年のディズニー映画の中でもとりわけ社会的だ。
バグを持つヴァネロペ、壊すことしか出来ないラルフ、彼らは社会から排除された存在であり、孤独やなりたい自分になれないことに苦しむ存在といえる。
しかし彼らの「不具合」は社会から押し付けられたものである。ヴァネロペもラルフも「不具合」であることを社会から押し付けられ、社会はその「不具合」を利用して結束を強める。要はイジメの論理だ。そしてこれは2人の反乱の物語であり、「不具合」であることを恥じない、ありのままの自分で生きることを決意する彼らの自己と他者への「許し」の物語である。

人は誰しも「不具合」を持っている。発達障害の人もいるし、ただ単に労働やコミュニケーションが苦手な人もいる。この映画はその「不具合」を否定しない。「不具合」を持ったまま生きることを絶対的に肯定する。「不具合」が社会から押し付けられたものであっても、それが自分自身であるからだ。そしてプリンセスという役割を担わされたヴァネロペはその役割も否定しないが、その役割に付随するステレオタイプのみを否定する。社会が求める姿を演じるのではなく、自分らしくありたい。そして自分らしくいても、人はプリンセスになれる。それはプリンセスという存在が王子や社会に選ばれた者ではなく、ディズニーが作りあげたプリンセス神話をヴァネロペが破壊し、全ての人にプリンセスへの道が開かれた瞬間である。全ての女の子、いや男の子も含めたプリンセスになりたい全ての人が、ありのままでプリンセスになれる新たな時代の到来である。

『シュガーラッシュ』はディズニーが作りあげた選ばれたプリンセスと選ばれた王子による神話を破壊し、全ての「不具合」を持つ人たちに「夢」が開かれた革命的な映画だ。

続編は更にプリンセスそのものにタイマンを挑むそうなので、今年中に観に行きます。
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