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遺体 明日への十日間のmoのレビュー・感想・評価

遺体 明日への十日間(2012年製作の映画)
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『この方々は死体ではありません。ご遺体なんです。』


東日本大震災発生直後の岩手県釜石市を舞台に、遺体安置所となった中学校の体育館でボランティア活動をした人々と遺族たちの10日間を描く。


この作品に点数は付けられません。
今までも災害や実際に起きた出来事を描く作品は沢山観てきましたが、この作品だけは良かったとか感動したとか、そういう言葉で語ってはいけない作品だと思うのです。


2011年、3月11日14時46分に発生した東日本大震災による死者は15,894人、行方不明者が2,562人。


この途方も無い数字の中から一人一人を見出そうとしたことがあっただろうか。

この作品に、ニュースで何回も見たような恐ろしい津波の映像は一切ない。
ただ次々に運ばれてくる遺体と、その遺体に向き合うボランティアの人達と、遺された遺族達だけが映される。



私はこの震災の恐ろしさを、実際の恐ろしさの10分の1もわかっていなかった。
ニュースで流れる映像や、被害者の数を眺めるだけではわからなかった。
そしてきっと、まだ全然わかっていないのだ。


増え続ける遺体に、見渡しても被災者しかいないその状況でも、彼等にはやるべきことがあった。
遺された者として、生き残った者として。
本当に、彼らには悲しむ時間さえなかった。


しかし彼等はどんな時でも、どんなに多くを奪われても、尊厳を失うことなく誇り高く生きていた。
悲しみから目を背けずに、心も体も傷だらけになりながら、地獄のような時間を生き抜いたのだ。


そんな彼等への敬意を、私はこの先決して忘れることはないだろう。決して。
そしてこの国に生まれたこと、この国の生き方を誇りに思う。
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