カタパルトスープレックス

ザ・マスターのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ザ・マスター(2012年製作の映画)
3.4
ポール・トーマス・アンダーソン監督のドラマ作品です。前作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のテーマが「腐った資本主義と腐った宗教」だとしたら今回のテーマは「ぶっ壊れた人間とぶっ壊れた宗教」でしょうか。

一度成功するとそれをさらに発展させて失敗するのはポール・トーマス・アンダーソン監督の悪い癖だと思います。『ブギーナイツ』のあとの『マグノリア』がそう。まあ、失敗とは言い切れないのだけれど、前作を越えられない。それは今作にも当てはまります。

それにしても、相変わらずキャラクター造形はうまいです。第二次世界大戦を戦った退役軍人フレディ・クエル(ホアキン・フェニックス)と怪しげな新興宗教の教祖ランカスター・ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)。この二人のキャラクターがとても立っています。ある意味、ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンによる演技の殴り合い。

本作品の欠点はストーリー。何が言いたいのかわからない。テーマはわかるけど、メッセージがわからない。ひょっとしたらメッセージなんて最初からないのかもしれない。それはそれでいいのだけれど、じゃあなんでそんなテーマを選んだんだよ?って話です。