Yoko

ザ・マスターのYokoのレビュー・感想・評価

ザ・マスター(2012年製作の映画)
3.9
ガソリンやシンナーを用いた酒造りを得意とするフレディは第二次大戦を終え帰国し職を得るが、戦時の生活の影響か社会にうまく馴染めない。
仕事を転々するなか、彼は一艘の客船を見かけ侵入する…。


社会、または社会を構成する団体やコミュニティに属すことがどうしてもできない人の苦悩。
社会の束縛から逃れ自由を勝ち取る!なんて謳い文句は、多くの平凡な人々にとっては夢物語でしかない。
従わない人生を歩む彷徨い人の満たされぬ表情、くたびれた表情が痛々しい。

人生において目的地がない、人生の意味が見出せない。
ダウナーになっている時に頭に浮かぶ、蓋をしておきたいこの種の疑問は一生付きまとう。
将来何になりたいか?と問われても、特に何かになりたかったわけでもなし。
その問いの対策として無理くりに目標を作ることにも欺瞞を感じる。
こんな感じに当てもなく彷徨うことそのものが陰鬱な気分にさせる。
今作の恐妻?が指摘するように、自分の人生に対して真剣な眼差しを持っていない人の下には、救済の機会すら舞い降りてこないのだろうか。

…とまぁ悲観的に捉えすぎたが、生身の人と冗談を交えながら楽しむことが出来るほどの、十分すぎるほどの救いがあるあたり一応はハッピーエンドかな?
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