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ザ・マスターのplimのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・マスター(2012年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

酒と女と暴力ばかりで、
砂で作った女性とヤルような、
獣のような主人公クエル。
彼がコーズという新興宗教のマスターと出会い、成長していく物語。

クエルは戦争から帰り、身寄りもなく、恋人にも振られ、仕事もなく、
人生の半分以上残していながら、余生の様に虚しくも自由に生きている。
マスターに出逢い、自分の過去と向き合い、トラウマを克服する事で彼を信じ始める。
しかし、彼の考えを否定する人間は容赦なく殴りかかり、感情を抑えられなくなるクエル。
それに失望するマスターだが、自分の宗教的な考えを証明出来るサンプルにもなりえる。と考え、クエルをカウンセリングし始める。

家族が欲しかったクエルと、自分の成果を見せつけたいマスターが出逢い、すれ違いながらも、愛情が生まれてくる二人の関係性が、奇妙でありながらも、家族のような暖かさを感じた。

撮影の裏話も面白く、
クエルが精神的にさ迷い、漂流しているように感じる印象的な航跡のシーンは、
たまたま撮れた良いシーンを加えただけであったり、
クエルを演じたホアキンはほとんどがアドリブで、便器を壊すシーンもアドリブであったり、
構成も欲しいシーンだけを撮り、後で編集で繋げて作られているなど、
この映画自体がアドリブで出来ていて、自由でありながらも、それが重なり重厚感のあるシーンが多い理由だと分かる。
しかし、見終わった後は心がスッキリしていて、浄化されたような、不思議な感覚に陥る。

映像も美しく、
自然豊かな空気感と、どこかノスタルジックな雰囲気が、安らぎを求める主人公と重なり、ストーリーに深みが増していく。

物語の後半ギリギリまで改心しないクエルだったが、マスターにとって自分が大切な存在である事が分かり、心が落ち着き、
砂の女性に寄り添うだけの人間に変わる。
ラストはバーで出会った
ウィン(勝利)という女性とセックスしているシーンで物語は完結する。彼がようやく、自分の狂気に打ち勝った事が分かり、清々しい気持ちになった。

ホアキンがアカデミー賞で言っていた、
『愛を持って救済に向かえ、そうすれば平和が後を追ってくる。』
という言葉は、世界平和だけでなく、
個人にも言える事だと感じ、改めて感動した。

悩んだ時や立ち止まった時にもう一度観たい作品でした。
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