このレビューはネタバレを含みます
あらすじ:友よ、君に幸あれ!
新興宗教の教祖が、一銭の得にもならないイカれた帰還兵を家族として迎え入れるが…という物語。
この世は基本損得勘定と悪意で成り立っているので、あてどなく何となく生きていれば誰かに利用されて辛いことばかり起こって、人生に意味を見出だせず絶望(魂は迷子)必至。逆に言えば、人生に意味を見出だせた(魂を救済できた)なら人生は幸福。
そのために、ランカスターは信仰をよりどころに。しかし、うまいことビジネスを成功させて裕福になっても、一向に救われた感が無い。それもそのはず、彼は宗教を履き違えていた。
宗教は綺麗事しかしてはいけないし、他の理念を拒絶してはいけないし、金をとってはいけない。この点、ランカスターは全部アウト。その家族は更に下等で、信者を選別する始末。
ただし、その魂救済法は理にかなっていた。内省させ、コンプレックスと向き合わせて、自力で克服させるというもの。しかし、結局は信者を操作する方法。操作=マウンティングであり、対等な関係は崩壊。当然、宗教として成り立たなくなる。
一方のフレディは、世界に拒絶され(たように感じ)て世界を拒絶する男。悲しみと怒りが溢れかえってどうにもならず、自暴自棄に鬱憤を撒き散らす日々。
ランカスターは一目みて直感した、こいつはかつて(信仰に目覚める前)の自分だと。フレディの救済が自分の救済に繋がると。
誰かを“自分が”救いたいという気持ちには、恋愛感情に近い利己性が含まれているもの。
フ「ありがとう何もかもマスターのおかげだ。」
ラ「いいんだよフレディよかったな(俺がいて)。」
ランカスターはこんな掛け合いを望んだはず。
しかしフレディ、ランカスターの生き方は自分に合わないと結論、ついに袂を分かつ。「何があってもあなたについていく」と誓った女が、男のもとを離れるのに似た決断。
フレディは感情の赴くままに怒り、泣き、悲しみ、喜ぶことに決めた。それは入信前の彼と何ら変わらぬ生き方だが、「このやり方で生き抜く」という信条が完成されているので、もう魂は迷子ではない。すなわち自立したということ。
それを感じ取ったランカスター、「俺のもとを離れるのなら二度と帰ってくるな。次に会う時は生涯のライバルだ。」と。恋人と一緒になることを諦め、ただ恋人の幸せを願うことに。ここではじめて、対等な関係が完成。
天を仰ぐランカスターと地を這うフレディ。正反対の道をゆく二人だが、目指すは同じく魂の救済。これはつまり、人は結局一人だけど、一人一人が人生に満足できたなら同じ場所に辿り着くことができるというお話。
主演二人の演技合戦がお見事。幸せそうにセッ○スに耽るフレディ、トラウマを克服した曙光が眩しい。
劇伴は『ゼアウィルビーブラッド』に引き続きジョニー・グリーンウッド。俺はジョン・ブライオンびいき。