はぎ

ザ・マスターのはぎのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・マスター(2012年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

再見
劇場で初見時に寝ちゃったのがもったいなかったなというくらい良かった

ラストのチャイナボートの歌泣くわこれ
不器用で放埒な内在的欠陥を埋めるかのような拠り所としての疑似父子関係、その関係の解消の切なさよ…
留置所に入れられた時のホアキンの肩甲骨の浮き出具合が役作りもあるだろうけど病的で、ジョーカーでも思ったけど身体性が演技に直結する稀有な俳優だと改めて認識した
キャスパーのアニメ映画に呼応するかの様に再び船に戻るシーンも良かった
未公開映像のクールのメンソールで何度も爆笑するホフマンとホアキンかわいすぎたな


追記
思い返せば思い返すほど、フレディというキャラクターを愛してしまう
 ロールシャッハで性的倒錯が明示されるのに女性と性的接触しようとすると寝ちゃうとこ。作中最後にバーで出会う女性とはベッドシーンがあるけれど、それまで女性を口説いたり裸の幻視をしたり浜辺のラブドールと擬似したりはするものの、性交自体はできてない。倒錯しつつも実質は精神的に去勢されてるのが怖かった。いるもんこういう人
 父をアルコール中毒で失くしていて父性愛を渇望してるのに、カメラマンの仕事で社会的成功を収め子もいる男性に対して暴行しちゃうとこ。何度言われても照明を近づけるって演技がすごくリアルに見えた。心では渇望してるのに破壊的・反抗的に接してしまうアンビバレントな精神状態がよく伝わった

 放蕩して悪気なく人を傷つけて酔っ払ってドッドの客船に乗って、そのまま人生自体もドッドを船長としたコーズの船に乗ってゆくフレディ
プロセシングは被験者を過去に遡行させる催眠療法っぽかったけどこの手法の正当性なんて正直どうでも良くて、フレディはただ大きなモノに抱かれたかった、父性を渇望して船長による導きが欲しかったんだと思う。コーズの教義や理念にはまるで興味があると思えないし。ただ体良くプロセシングで日本兵をたくさん殺したこと、ドリスと交わした約束を守れなかったこと、叔母と性行為をしたこと等を話して動物と罵られるだけに見えたし、中盤でやらされる壁と窓を往復させられるあの工程も意味があると思ってやってないだろう。父性愛への憧憬だけで導きを与えてくれたドッドに心酔してるからこそ、他者がコーズを批判すると暴力をふるってしまう。ドッドとの疑似父子関係のみが癒しで、コーズへの疑念の閾値が振り切れたところがあの中盤のバイクで消失しちゃうシーンなのかなと思った。ドリスの元を尋ねて話を聞いて、精神的去勢は収まったように見えたから、プロセシングが全く無意味であったわけではない。
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