五十

フライトの五十のレビュー・感想・評価

フライト(2012年製作の映画)
3.8
これは依存と嘘の話で、みんなが言ってるように法廷サスペンスの話ではないです。
あらかじめ予告詐欺だと教えられていて良かったー。

この映画の主人公は飛行機のパイロットなんですが、もう本当に本当にどうしようもない奴でフライト前やフライト中に酒を飲んだり、手を差し伸べた人を裏切ったり、嘘をつきまくったり、他人に嘘をつくことを頼んだり、とても大事な公聴会前にまた飲んだりともうぶっちぎりで最低なんです。
ただ、彼がこうも呑んだくれ&嘘つきで本当に呆れてしまう奴なのは確かなんですが、単に一言で「クズ野郎」とか「自業自得」って言ってしまっていいのでしょうか。

この映画、大なり小なり観てる我々にも関係のある話をしているんだと思うんですよ。
嘘の上にまた嘘をついて身動きがとれなくなる、中毒とまではいかないが何かを自制できなくて他人を(自分を)困らせてしまう。
誰にでもあることですよね。
特に依存と言っても沢山ありまして劇中で触れられたアルコール依存、ドラッグ依存の他にセックス依存、恋人依存、スマホ依存、最近ではマスク依存なんてのもあります。

現に僕は依存症とまではいきませんがゲームを本当にやめられない人間で22時間連続プレイとかザラです。
それが原因で授業を休んだりレポートを提出しなかったりすることが結構あります。
僕も、彼がついついお酒を飲んでしまうシーンでは呆れると同時に共感してしまいました。

そんな僕には特にこの映画が刺さりまして…。
僕は人と関わる仕事に最近就職が決まったんですが、「僕が将来働いた時にまだゲームを自制できなくて、その影響(睡眠不足など)から集中力を欠いたことが原因で誰かを死なせてしまったら…?」とか考えてしまったんですよね。

そして誰でもつくことがある「嘘」ですが、主人公は依存者の会に一度は嫌々参加するもすぐに抜け出しますよね。
あれって劇中あんなに否定してたアルコール依存を自認してる証拠だと思います。と同時に自分にも嘘をついた瞬間でもあるんですよね。
そんな他人にも自分にも嘘ばっかりで嘘で固められてた彼は最後の最後、嘘をつかずに本当のことを告白するわけです。
劇中で一番本当のことを言いづらい場面でです。
「死人に口なし」というようにそこでも嘘をつけばもう安心なわけですが彼はそれをしませんでした。
そこで彼のなけなしの人間性というか道徳心を見たような気がしまして僕も泣いてしまったんです。
僕がもし彼だったらあそこで同じことができただろうか…とか考えちゃって…。

このように僕は劇中何度も誘惑という試練を与えられてるような気がしまして、他人事じゃなかったんです。

この映画、僕みたいな自制できなかったりするクズはクズほど響く映画だと思ってます。
この映画を観て全然響かない人が皮肉でなく本当に羨ましいです。