シュワルツェネッガーの復帰作というより、キム・ジウンのハリウッド進出第一作と言った方が良い作品。
話としてはシュワルツネッガー演じる老保安官が、街へやってきたならず者を叩きのめすという現代版西部劇になっている。馬車の変わりにGMが誇るマッスルカーであるコルベットとカマロが疾走する姿はグッド・バッド・ウィアードを作ったキム・ジウンにピッタリの題材といえる。しかし残念なことに本作ではキム・ジウンの作家性は弱く、全体的に保守的な作りになっている。
特に銃の着弾描写がいまいちだし、コルベットで逃走するというハイテンションな展開にも関わらず全体的にギクシャク感が漂っている。また悪役の殺人描写が過剰にも関わらず死に方がそうでもない。犯した殺人の質とそれに対応する殺され方の描写のバランスが釣り合わない為、見終わった後の爽快感のような物が弱くなってしまっている。
前半は監督がハリウッドの出方を様子見して自身の作家性を意図的に抑えているような印象を受ける。もちろん前半パートに多くあるカーアクションの部分は悪くない。そして後半のシュワルツネッガーが立ち上がるシーン以降はテンポが急激に良くなる。各自自分の使用する武器をメンテナンスシーンは上がるし、バズーカの爆風の中からマシンガンを持ったルイス・ガスマンが登場するシーンはカッコイイ。トウモロコシ畑でのカーチェイスシーンやクライマックスの橋の上での決斗の演出は見事で、全体を通してみると西部劇を現代でやるというコンセプトは成功している。
成功の最大の要因はシュワルツネッガーに尽きる。この人は元々イーストウッド等の西部劇が好きでアクション俳優を目指したという経緯があるので、西部劇を熟知しているの現代版西部劇という本作のコンセプトと凄く相性が良い。実際老眼鏡をかけるシーンの仕草はイーストウッドを連想させるほど似ている。
しかし一方でシュワルツネッガーならではというアクションが弱いというのも事実だ。65歳にもなって筋肉超人で居続けるの非現実的ではあるが、やはり最後は一肌脱いで欲しかった。