垂直落下式サミング

ラストスタンドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ラストスタンド(2013年製作の映画)
4.5
メキシコへの逃亡を図る凶悪犯を迎え撃とうと国境付近の町を守る保安官たちが熾烈な戦いに身を投じていく。家政婦さんとロマンスしたことでカリフォルニア州知事を退任したアーノルド・シュワルツェネッガーが、久々の単独主演を果たしたアクション作品。
誰にも追い付けないスピードで迫ってくる犯罪者を食い止めるために田舎者たちが団結し、武器をかき集め町を要塞化するところから加速度的に盛り上がってくると思われる今作。クライマックスの銃撃戦、そして肉弾戦、調子に乗っていた逃亡者が、ラストにかけて徹底的にボコボコにされる姿が笑いを誘う。
軽薄な80年代アクション出身者の代表ともいうべきシュワルツェネッガーが住民からの信頼の厚い老保安官を好演。艱難辛苦を乗り越えてきた男シュワは、ちょうど『リオブラボー』のジョン・ウェインや、『ハイヌーン』のゲイリー・クーパーのような、「迎え撃つもの」として抜群の重量感を獲得していた。
逃亡者を追うFBI捜査官は、黒人の名優フォレスト・ウィテカー。演技派として知られるが、この人が重要な人物として出演していると、なぜかB級の匂いが漂ってくる。
その他、女性保安官ジェイミー・アレクサンダー、銃器マニアのジョニー・ノックスビル、ルイス・ガスマン、ロドリゴ・サントロ等、柔らかい面々が脇を固める。
それにしてもドラマ女優のジェイミー・アレクサンダー、こんなに綺麗な女優だったのか。このずっとみていたくなる凛々しさは、映画より連続ドラマ向きなのかもしれない。
こういった題材は男臭くなりがちだが、脇を飾る女性たちにしっかりと花があっていい。人質にされてしまうFBIの女性捜査官、ダイナーで働いているウエイトレス、窮地を救うババア、男たちの戦いに付随するドラマの添え物ではあるけれど、しっかりと見せ場を与えられひとりの人間として描かれている。
『ジャッカス』から出張ってきたジョニー・ノックスビルは、もっと命知らずなキャラクターでもよかったと思うが、バカなりにバカを好演しており、バカにしてはよくやったと思う。
アメリカハリウッドでは、血のりがほとんど無いアクション映画が幅を利かせていた時期があり、今作も同じ類かと思っていたが、韓国からキム・ジウン監督を招いたことで、バイオレンス面が強化・発展。新しい風を吹き込んでいる。着弾した部位から見事な血飛沫が吹き出したときは、胸が高鳴った。
『大脱出』よりも今作の方が好み。あっちはスタローンとのリハビリをみせられている気分、本作はしっかりと自分の足で地を踏みしめ立てている。
シュワの隠居済みっぷり否めないものの、それでも信念を持って戦う姿が好きだ。