KnightsofOdessa

5windowsのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

5windows(2011年製作の映画)
4.5
[時間の重なり、世界の重なり] 90点

様々なバージョンがあるようで、サンクスシアターにある本篇らしきものと山口篇"Mountain Mouth"が合体した作品と恵比寿映画祭篇を鑑賞したのだが、どこに書けばいいか分からんので取り敢えずここに。『5 windows』(以下、本編)は、2011年の8月末にある橋で交差する三人の人間の運命を描いている。交差と言っても大事件が起こるわけでもなく、視線を動かした先に居る程度だが、その原因を作ったのが全て中村ゆりかとして表現されているため、この出会いが確かに"運命"であることを我々だけが理解しているのだ。全ての時間は14時50分の前後10分くらいに留め置かれていて、女子高生がカメラを持って橋に来るシーンと若い男が自転車で橋にやって来るシーンと近くのビルの屋上で家庭菜園に水をやる男の物語が何度も語られるのだが、繰り返される度に細部が微妙に異なっていて、それらが多次元宇宙的な"現実"なのか、それとも震災以降の時が止まった世界に対する"全ての可能な世界"を指すのか、或いは『素晴らしき哉、人生!』のような"存在なき世界"を示しているのか(はたまたその全てを包含するのか)は分からないが、"現在"という流動的で定義し難い時間についての考察という点は共通しているんじゃないか。

濡れた花火、片足のビーチサンダル、川を流れる答案用紙(の紙飛行機)という明白な震災的"死のイメージ"が横溢している本篇と比べると、山口篇は姉妹篇というよりもセルフパロディ的な側面が強いように感じるが、肩をすくめた中村ゆりかの"そんなことないよね"が強すぎるので結局どっちも好き。ロボ子~

恵比寿映画祭篇には中村ゆりかは勿論のこと、染谷将太も再登場する。本編は橋という限定的な場所だったが、こちらではより広大な"恵比寿"が中心となるため、かなりアクロバティックに展開される。一番ヤバいのは歩道橋と展望台が光で結ばれるとこ。これまでの二作でも切り返しで時空やら距離やらを圧縮して横断してきたが(本作品にも登場)、今回はそれら物理的距離を物理で圧縮した凄まじき瞬間を目撃した気がした。
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