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カリフォルニア・ドールズのnetfilmsのレビュー・感想・評価

カリフォルニア・ドールズ(1981年製作の映画)
3.9
 ロバート・オルドリッチ監督の遺作にして、実に味わい深い魅力をたたえた小品である。この映画が撮影された81年と言えば、ジョン・カーペンターが『ニューヨーク1997』を撮り、スピルバーグが『失われたアーク』を、デ・パルマが『ミッドナイトクロス』を撮った年として知られている。ハリウッドに押し寄せたこうした若い力の波に影響されること無く、オルドリッチは良くも悪くも古色蒼然とした最後のハリウッド映画を描いた。題材には「女子プロレス」という映画的には最も危険な題材を選択しながらも、リングの上を躍動感たっぷりに闘う2人のヒロインの姿を活き活きと描いている。マネージャー役のピーター・フォークが絶妙で、すっかり枯れた飄々とした役柄を実に見事に演じている。特技はバットを振り回すこととリング・サイドでのヤジで、どこか抜けた敏腕マネージャーとレスラーとの恋は深い味わいを醸し出す。ピーター・フォークと悪の興業主であるバート・ヤングとのやりとりがいちいち面白い。バート・ヤングと言えば『ロッキー』のエイドリアンの兄貴を真っ先に思い出すが、70年代のTHE良い顔の代表格であるフォークとヤングの掛け合いが面白い。

 徹底して男性の映画にこだわって来たオルドリッチが日陰の女性たちにスポットライトを当てるのだが、やはりピーター・フォークやバート・ヤングら男性俳優陣の使い方の方が圧倒的に上手い。それでもベッドで将来を不安視して泣いたり、途中マネージャーとレスラーの恋を積極的ではないが描いたり、要所要所に登場人物の心の葛藤が描かれていて泣かせる。オルドリッチはあえてモーテルや控え室で話せばいいことを車の中で話し、その車での移動の様子をあらゆる角度から据えたロング・ショットでまとめる。流石に職人らしい素晴らしい演出とショットのつなぎである。広いアメリカをぽんこつキャデラックで巡業する様子がある意味この映画の核であり、ロード・ムービーの様相さえも感じることが出来る。バーガー・ショップ、電話BOX、モーテルなど70年代末の情景を感じ取れるし、カリフォルニア・ドールスの2人のファッションもこの時代を生きた者にとってはひたすら懐かしい。ラストの入場シーンはリングの上での闘いの前にもう一度見せ場を作る。ピアノの伴奏者や子供たちと示し合わせて行う演出がひたすら憎い。あの堂々とした古臭さこそがオルドリッチの真骨頂である。

 80年当初のレスリングはまだまだクラシックな魅力を讃えているが、数ヶ月に渡り、プロレスの修練を積んだフレドリックとランドンの動きも頑張っている。危険な投げ技などはほとんどないが、一歩間違えば大ケガである。ラスト・シーンのそんな馬鹿なというような強烈な爽快さはオルドリッチならではの力業で。リアリティよりも作り物の素晴らしさに徹底的にこだわっている。
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