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マリーゴールド・ホテルで会いましょうのmaverickのレビュー・感想・評価

4.3
想像以上に良作で、めちゃくちゃ感動してしまった。熟年男女7人が遠く離れたインドの地で新たな人生を発見する話。人生に悲観的な彼女らが未開の土地での出来事を通して考えも変わり、心が穏やかに癒されてゆく。登場人物たちは事情も様々。偏屈で性格の悪さがにじみ出ていたりもするのだが、それには理由がある。逆に紳士的で問題がないように見えても、人知れず悩みを抱えていたりもする。人生を長く生きてきた彼女らのそれぞれの物語が本作に深みを与えている。ジュディ・デンチ、ビル・ナイ、マギー・スミス、トム・ウィルキンソンなどの熟練俳優がそれを表現しているのだが、キャラクターの年齢と同じ人生の歳月を感じさせる。ぱっと見は嫌なキャラなのに、観終える頃には全てのキャラに愛着を感じてしまう。脚本だけでなく役者の演じ様も見事だ。英国俳優出演の映画だが、舞台はインド。ぷちインド映画としても楽しめる。インドに対しての偏見を覆す作品でもあり、それをインドという国に偏見を持った英国人らを通して見せる。汚いとか、野蛮で粗雑とか、発展途上といった印象だが、過ごしているうちにそんな気持ちは取り払われてゆく。インドの人々の考え、インドという地の魅力が7人の心を清めてゆく。歌って踊ってというのこそないが、インドの良さを知るに相応しい映画となっている。マリーゴールドホテルの若い支配人を演じるのは、『スラムドッグ$ミリオネア』、『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』のデーヴ・パテール。彼を始め、インド側のキャストの面々の演技も素晴らしかった。インド映画を観れば分かるが、インドの俳優の演技力の高さはハリウッドにもひけを取らない。本作でも英国を代表する名優達に交じっての熱演は目を引く。インドはインドで素晴らしい映画を作るが、こうして海外とのコラボ作品でもクオリティの高さを証明する所は流石だ。英国人がインドに魅了されるだけでなく、インドの人々が異文化であるイギリスからも影響を受ける所も良い。それぞれの国にそれぞれの良さがある。それは個人個人にも言えること。人種や見た目の偏見に囚われず、同じ人間として接することが大切。それが本作のテーマだと思う。優しい気持ちになれる素敵な作品だった。続編もあるのでそちらも楽しみだな。
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