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空気人形のsonozyのレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
4.5
2009年、是枝裕和 脚本/監督作。
原作は1999年のコミック『ゴーダ哲学堂 空気人形(業田良家)』
『空気人形』という不思議なタイトルと、森本千絵さんによるこのビジュアルで以前から気になっていた作品です。

ある男の性欲の対象として使われている"空気人形"(ラブドール)に心が生まれるファンタジー。

ファミレスで働く秀雄(板尾創路)は「のぞみ」という名の"空気人形"(ペ・ドゥナ)と暮らしている。
その日あった事を話し、一緒に風呂に入り、散歩に出かけたり、もちろんアレも。

突然、生命が宿った「のぞみ」は、可愛いメイド服を着て外出し、様々な人やものに触れていく。
ふと立ち寄ったレンタルビデオ店の店員 純一(ARATA)に惹かれ、その店でアルバイトを始める。
秀雄が帰宅する前には家に戻り、秀雄の前ではあくまで"空気人形"のまま。

ある日、ビデオ店で仕事中、釘に腕を引っかけてしまい空気が抜けてしまう「のぞみ」
驚く純一だが、彼女の指示通り、おへその空気穴から息を吹き込んで元に戻し、二人の関係が始まる・・・

"空気人形"役のペ・ドゥナ(韓国)が名演!
また、撮影監督が『夏至』『花様年華』なども担当した台湾の李 屏賓(リー・ピンビン )という事で映像も素敵です。

板尾創路、ARATAの他、高橋昌也(老人)、余貴美子(受付嬢)、岩松了(ビデオ店長)、柄本佑(オタク浪人生)、寺島進(警官)など、それぞれが孤独と欠如を抱える配役も絶妙。
「のぞみ」が一度生まれた場所に戻り、対話するオダギリジョー(ラブドールの人形師)も良かった。

「生命は」(吉野弘)という詩が引用されているんですが、これがグッときます。
(その一部)

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
・・・
生命は
その中に欠如を抱いだき
それを他者から満たしてもらうのだ
・・・
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
・・・

切なくて、じんわりきて、考えさせられる、不思議な魅力の作品です。
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