ひな菊

空気人形のひな菊のレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
3.8
心を持ってしまった空気人形(ラブドール)、のぞみ。
演じるぺ・ドゥナさんの、人形と人間(?)を行ったり来たりする演技が凄かった。あまりの透明感にひきこまれます。

前半、のぞみが見る新鮮でキラキラ光る世界。戸惑いながらも人を好きになるワクワクした気持ち。

好きな人から空気を吹き込まれるシーンでは、恍惚とした表情に、ヌードの姿よりもドキドキしました。

後半には嫉妬、怒り、虚しさ、どうしようもない悲しみが描かれて、ただただ、切ない。代用品であることから逃れられない残酷さ。

こんな展開になるとは思わなかった。

作品の中の日常がリアルで、自分も隣に住んでいるような気分になった。
ファミレスで働く秀雄、レンタルビデオ店の店長、過食症のOL…。

ごはんを食べてお風呂に入って寝てゴミを出して仕事して、その繰り返しの中に、ときどき何かが起こる。

悩みやストレスや虚しさを抱えながら、小さな幸せをいとおしみながら、窓の内側でひっそりと、その人だけの物語が進行している。

吉野弘の詩「生命は」が素晴らしく、物語と絡まり合い、美しかった。
のぞみが見た夢のシーンに涙がこぼれました。
ひな菊

ひな菊