映画X-MENシリーズのスピンオフ/ウルヴァリンシリーズの2作目。
この映画は映画としては珍作だと思いますが、ところどころに100億点叩き出すシーンが複数まぎれているので侮れないです。
興奮するシーンがいくつかあったので、個人的にはけっこう好き。
<以下、ネタバレ感想>
《よかった点》
【1】ジャパニーズヤクザ
今作で何をおいても一番に語るべきは「ジャパニーズヤクザ最高!最強!最恐!」ってこと。
・モブ下っ端ですら、時速300km近くで疾走する新幹線の屋根上でウルヴァリンと互角の戦闘を繰り広げる超人的身体能力と戦闘力!
・アダマンチウム製?と思われるほどの強度を誇るドスはウルヴァリンの爪でも破壊できない!
新幹線でのアクションシーンは、涙流して爆笑しながら興奮するという不可思議な映画体験ができるX-MENシリーズ屈指の名(迷)場面で必見です。
戦闘を終えて命からがら車内に戻ってきたローガンに対してマリコが「何があったの」って尋ねるトコ、真剣な表情なのに、
「何があったか話しても信じてもらえんだろうなあwww」って思って爆笑してしまった。
アベンジャーズ1でチタウリたちはNYを襲撃したけれど、この世界のTOKYOを襲撃したら返り討ちにあって全滅していたことでしょう。
また、ハリウッド作品で日本が登場する際の気になる部分として、登場する日本人キャラの日本語が若干カタコトな点があるのですが、
「行けおらああ!」「やっちまえええ!」等の怒号ガヤが完璧なネイティブジャパニーズで感動。
個人的今作イチ好きなセリフは葬式シーンでの
「ビデオ撮ってんじゃねぇぞコラぁ!」です。今まで観たハリウッド映画に登場する日本語セリフの中でいちばん好きかもしれない。
【2】日本描写について
ヤクザ/ニンジャ/唐突に出現する城、といった外国人の思い描くジャパン要素全開ではありますが、
これまでハリウッド映画で描かれてきた珍妙ジャパンと比べると、作品全体としては「日本」が比較的ていねいに描かれていて好印象でした。
日本人の脇キャラの描き方もなかなかリアルだった。
*ラブホの受付のおばちゃんのリアクション
「英語話せない。英語話せない。ノー!英語ノー!ノーノーノー英語。」
まさにガイジンに話しかけられた際の日本人の典型的リアクションで思わず「これだよなああ!」って思った。
そんな拒絶反応しておきながら、重傷のローガンを最終的には治療してくれる親切さとか、まさに日本人って感じ。リアル。
*自宅で裸ネクタイでお姉ちゃんと戯れる法務大臣
表では生真面目な感じでも、自宅ではオタク全開になったり変態性見せたりする部分って日本人的だと思う。
あんな感じにお姉ちゃんはべらせる日本人がいるかどうかは別として、日本人の表と裏のギャップみたいな性質をわかりやすく描いているなと思った。
*立て箸の件
マリコがローガンに立て箸を注意するシーンもよかった。
ああいう文化の違いを描くのって本作みたいな作品では大事で、いいシーンだったと思う。
マリコ役の岡本多緒(TAO)さんはビジュアル的にも雰囲気的にも理想的な配役だった。美しくて上品で魅力的だったと思う。
日本語が若干不自然だった気もしたけど。
【3】日本ロケ
本作はハリウッド大作には珍しく、日本で実際にロケをして撮影されました。
*芝の増上寺
葬儀シーンのロケ地。ここは背景に東京タワーを映せるから選ばれたのだと予想。
東京タワーはことあるごとに画面に映りこんできて、外国人からみて今でも東京のランドマークなんだなって感じます。
外国人から見た日本像って、「赤」がシンボルカラーなんだと思う。
映画関係ないですが、スカイツリーも赤色で建てればよかったのにって思います。
*上野駅周辺
上野を駆け抜けるシーンは実際に上野の街中でロケをしたため、絵的にちゃんと日本だった。
権利の都合上か、明らかに後付けと思われる架空の看板もかなりあったものの、ビックエコー/さくら水産/メガネドラッグ/ガスト/TSUTAYAなどの看板を確認。
本物の日本でヒーローが走り回っている!って興奮する。
ありがとう本当にありがとうの感情しかない。
*家屋について
ヤシダ家の邸宅、マリコの長崎の別荘などの家屋の造りは、とんでもジャパニーズ建造物ではなくきちんとリアル。
別荘のほうは広島の実際の家屋でロケしたんじゃないかな。ヤシダ邸はわからないけど。
*鞆の浦
ポニョの舞台 鞆の浦と、福山市/今治市が長崎の設定で登場。鞆の浦は日本の原風景っていう点ではこれ以上ないロケ地ですよね。
実際の長崎でロケしたら洋風建造物多めになってしまうのでこっちでよかったと思う。ただ、それだったら広島の原爆設定でよかった気もしますが。
今治市の海岸沿いは日本映画的な景色で、マリコの美しさが倍増してみえました。あと唐突な小川直也には笑った。
《残念だった点》
【3】人物構成
ラスボスの結末と、敵側中心に人間関係の整理できてなさすぎなのが映画としてはかなり痛い。
ヤシダ爺/シンゲン(真田広之)/ミュータント女/忍者の彼/法務大臣の彼/ヤクザ軍団らが、どういう関係性で誰が何を考えていてどうつながっていて、
マリコの味方なのか敵なのか、ローガンをどうしようと思っているのか、が整理されていない。
そのため、何が起こっているのか、どこに向かって(敵側の)話が進んでいるのかがうまく見えてこないため感情移入できない作りになっている。
終盤の展開はいろいろとサプライズ要素を入れたかったのかもしれないけど、グダグダになって話が崩壊しているだけに感じた。
もっと単純明快に人間関係を整理して、シルバーサムライはヘンなCG感全開の謎スーツじゃなくて。
真田広之がミュータントで、ラストに変身してシルバーサムライの姿を見せるっていうベタな展開でよかったと思う。
【4】マリコとヤシダ爺について
マリコは女優さんはよかったけど、キャラクターとして問題点がある。ローガンを愛することになる背景事情がやや薄いっていう点。
これはヤシダ爺の扱いがダメだったことが大きいと思う。
彼の意思を継いだマリコが、世代を超えてローガンに恩返しにくるっていうシンプルなストーリーでよかったんじゃないか。
そうじゃないと長崎でのローガンの行動なんだったのよってことになるし、ヤシダ爺の扱いはひどすぎると思う。
ローガンって基本的に悲惨な人生歩んでるけど、これじゃ救いなさすぎじゃない?って思ってしまう。
日本刀は受け取ってくれなかったが、クズリの話を聞かされて育ったマリコは出会ったことのないローガンとの出会いを待ち続けていた、的なストーリーにすべきだった。
「あの汚い人誰?」っていう最初のリアクションからして、彼女が当初はローガンに対して特別な思いはなかったようだから、単に助けてくれたから惚れただけみたいになってしまっている。よくあるお姫様ストーリーで、この話が時代と世代を超えて再来日した物語であるっていう設定が反映されていなかった。
長寿のローガンっていう設定を活かして、時間と世代を超えた重みのある愛情っていう形にすべきだと思う。
ZEROもそうだったけど、ローガンが長寿だからこそ起こる、時代を超えた人間関係/絆みたいなものをなぜ物語にとりいれないのか。
大昔に関わった人が彼のことを記録に残していて、それをもってくるキャラが登場するなり。50年前と同じセリフを同じカットで初対面の人物から言われるとか、映画表現としてもおいしいと思うのにな。
毎度、ただ単に「回復能力便利だから奪いにきました」みたいな話で、彼の長寿が物語に活かされていない。
【5】映画的技法について
映画を観たあとに「なるほどなあ!」って高ぶる要素の1つとして、序盤のちょっとした出来事が終盤のシーンにきちんと意味をもってつながってる演出というのがある。
いわゆる伏線の回収。本作はそのあたりが雑だったりズレていたり、ムダにされている部分が多すぎるという印象。
*シンゲンの剣道
序盤でローガンが、剣道をするシンゲン(真田)を見て言った「あの男できるな」的な発言なんだったのか。
中盤の心臓から虫取り出すシーンの中ボスを蛇女にして、シンゲンがミュータントでラスボスのシルバーサムライだったっていうのでよかったでしょ。
*日本刀の件
若き日のヤシダ爺が井戸の中で渡そうとした日本刀になんできちんと意味を持たせなかったのか。
不老不死不滅って刀に書いてあるの意味わからないし、受け取ってくれなかったから命もらうよ、って意味わからなすぎる。
体張って命守ってあげたのにそりゃないでしょってなるから、映画表現として失敗。
受け取ってもらえなかった刀を、最終的に恩義とともに形を変えてローガンが受け取るっていう展開じゃないとおかしいと思う。
「日本の刀は両手で持て」っていうの覚えてたってのが伏線みたいになってるけど、
それは若ヤシダのその言葉によって、シンゲンを倒すんだったら「ヤシダありがとう」になるけど、そうじゃないからぜんぜん爽快感がない。
*背後から毒矢の件
オープニングでの「クマを背後から毒矢で撃つとかダメだろ」って話。
終盤で忍者の彼が毒矢を持ち出したからなんかあるのかと思ったら何もなかった。このために伏線張ったんじゃないのかよ!ってちょっとガッカリ。
忍者の彼は、背後から毒矢で痛い目にあって→ラストは正々堂々と正面から矢を放ってローガンに賞賛される、って描写が王道。
【6】日本語について
英語圏の視聴者にはどうでもいいんでしょうが、やはり日本人キャラの何名かは日本語がカタコトぎみでキツいです。
マリコとユキオも若干あやしいし、忍者の彼がちょっと聞いてられないくらい酷い。
真田広之の気合い入った演技とのギャップが激しすぎて余計に際立ってしまいます。
【7】ジーンについて
たびたびローガンの夢に登場するジーン。
ローガンの抱えるトラウマと苦悩を描くために彼女を登場させる使い方自体は非常に効果的でよいと思うのだけれど、女優さんの年齢的に半裸はキツかった印象。
旧シリーズでは30代の美女だったファムケヤンセンも本作撮影時は47歳。ブルーレイ画質では肌の張りとかかなり厳しかった。特に終盤の白くて明るいシーン。
■スコア
減点部分が多くて、映画としては★2.5くらいの作品ですが、
・ジャパニーズヤクザの活躍で+0.5
・日本でロケしてくれてありがとう本当にありがとうで+0.5
ということでスコアは★3.5です。