クマヒロ

藁の楯のクマヒロのレビュー・感想・評価

藁の楯(2013年製作の映画)
3.3
『守るべきものを考える』

藤原竜也演じる少女連続殺人犯、清丸国英。被害者には山崎努演じる財産家、蜷川隆興の孫もいた。
『清丸を殺せば10億円支払う』
蜷川のメッセージが各種全国紙、インターネット上に公開される。福岡県警で自首した清丸を警視庁に移送するミッションが始まる。

今作『藁の楯』の優れた点は上記の条件以外でさらに追加条件が重なっていくことで、作品全体のテーマ性、メッセージ性を底上げしていることである。

まず、ぶっ飛んだ設定に更に追加条件で「殺害未遂で1億円」が足され、物語が激化。清丸に娘を殺された男の登場。警察内部の敵の登場。銘苅と白岩の清丸を殺してしまいかねない過去が明かされ、最後には清丸が暴走し始め…。
と、あらゆる手段で銘苅と白岩が清丸を殺したくなるような場面が訪れる。

この条件の追加により作品のアクションに説得力が増し、作品のテーマに沿った物語の盛り上がりを見せ、更にはメッセージ性がぐんと上がっている。

守るべきもの、譲れないものは何か。
意地でもやり返さず、自分自身を殺して、あらゆる不条理にぶつかっていく銘苅。
むしろそれが死んだ人のためになると信じ、自分の信条に従って行動する。

「すげえ」
観客の気持ちをぐっと掴むこの一言。
不条理に満ちた世の中で自分の倫理観を守ることは難しい。自身の考えを強く持つことが大事だと痛感させられる。
銘苅と対照的な清丸・蜷川。三者三様の道がラストに提示され見事な幕引きを見せる。
『新聞記者』『AI崩壊』でも、扱っているテーマは違えど近いメッセージが窺える。自分で考えて行動する、日本人に本当に欠けていることなのだと考えさせられる。

しかし、この作品でどうしても無視できないポイントが一つ。ツッコミどころの多さである。
凶悪犯を護送してるとは思えないあまりにもまぬけなSP白岩。ラストシーンの警察がドラマチック演出のために動かない。主人公、銘苅だけが着る防弾チョッキ。突然消えるタクシー運転手。
思いつくだけでもこれだけあるツッコミどころが作品を観ている間ひたすらノイズに。

ぶっ飛んだ設定にこれだけのツッコミどころ、雑に作られた印象を受けてしまう。
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