八木

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点の八木のレビュー・感想・評価

4.2
 最新作に向けて予習した。
 一本目見て「あーこれ別に頑張って観ないでいいやつだな」と思ってたんですけど、2のほうが断然面白かった。1はもう、金のかかったVシネであって、予想以上のものも以下のものも与えない、作品紹介のための映画って感じだったし、これがそのまま続いてもらえたら特に文句も出ない品質だったんだけど、今回は原作のチョイスと見せ方がキラリと光って、ぐっとキャッチされた。震災後に作られたということもあって、テーマ的に原発が取り入れられていることと、それが自爆しない程度の温度で触れられているバランス感覚にも驚いた。どうしても映画で何か表現する人って、アツアツになった状態で創作するじゃないですか。そしてどこかで大幅に踏み外すじゃないですか。そして、そういう踏み外す情熱も「議論を巻き起こせたら勝利(=高評価)」ってことに陥りやすいじゃないですか。園子音とか。とりあえず園子音とか。で、確かに観客としては、自分とは無関係かつ突っ走って流血しまくってる情熱の人をエンタメとして雑に消化することを否定できないからな。
 この続編は、どの時代から見返しても、ポスト東日本大震災であることがわかる上に、社会的メッセージはうるさくなく、普遍のお涙頂戴を1作目と同じ温度でやっていて、「おなじみキャラが動いてうれしい」以上の高みを目指していた。反原発を真剣に目指そうとするある政治家と、反原発を目指すあまりカルト化している(またそれに自覚を持てない)集団と、その是非をつけないままに純度の高い悪を登場させて打ち消し、固く消化できる(またはどうでもよい)テーマに落として話を完結させた。間にいろいろなこと考えさせながら、やっぱり大泉洋と松田龍平がわちゃわちゃ動いて楽しかったんですよ。好きですわ、この映画。好き嫌いはあると思うけど。
 ただ、「3」のクレジットみたら監督交代になってんのね。残念。もう少し橋本一の探偵BAR見たいなあ。
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