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僕の中のオトコの娘のemilyのレビュー・感想・評価

僕の中のオトコの娘(2012年製作の映画)
3.2
職場で人間関係に悩み早々辞めてしまい、引きこもりでニートの謙介、ある日ネットサーフィンで「女装娘」が集まる掲示板見つける。書き込みを通じて徐々に女装に興味を持ち、カリスマブロガーのカリンとメールのやり取りを始める。やがて女装バーに入り浸り、居場所を見つけていくのだ。偏見の目にさらされながらも、自分自身を見つけて。。

姉と謙介の関係性が非常にいい。心配でしょうがなく後をつけて、女装してることを知っても、姉はただ黙って見守っているのだ。しかし笑顔の奥に微妙な表情を常に浮かべてる中村ゆりの演技が光る。父親役のベンガルも言葉少なくとも、息子の熱意が徐々に伝わっているのが、細かな表情や仕草に現れているのが良かった。

謙介演じる川野直輝も決して女になりたいわけではなく、ただ女装が好きなだけである真っ直ぐで瑞々しい演技が家族二人と交差し、リアリティのある家族像が出来上がっている。

特に冒頭から女装に目覚めていくまでの描写が淡々とした中に自然な流れがあり、短い描写の中にしっかりとリズムを感じられた。

女装子といっても色んな種類の人が居るし、そこにゲイの男性も交差する。全員何かを抱えて孤独であるからこそ、情に厚く謙介もすぐに溶け込めるのだ。人は一人で生きられない。生きる事は少なくとも誰かに迷惑をかけるものだ。

特に好きなことをしようとした時に犠牲になる物は沢山ある。それでも突き進むしかない。迷惑をかけた分やりたいことをやり続けるしかないのだ。ラスト突き抜けた笑顔とオレンジの光、自分が自分で居られる喜びに溢れる謙介の初めてのフルウィッグ、自然と溢れる挨拶の声が清々しかった。

ニートである時間だって意味がある。その時間があって自分を見つけられる事もある。無意味な時間なんてないのだ。側からみたらそうであっても人生焦ってもしょうがない。
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