晴れない空の降らない雨

子ぐま物語/ファン・アンド・ファンシーフリーの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

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 『ボンゴ』(『こぐま物語』)と『ミッキーと豆の木』の中編二本立て。それぞれ実写パートの前口上があり、『ピノキオ』のコオロギ、ジミニー・クリケットが合成で出演したり、当時有名だった腹話術師と『南部の唄』出演の女の子が会話したりする。
 
 正直、普通のセリフ無しカートゥーン作品を並べただけで、オムニバス・シリーズの中でも最も言及すべきことがない。個人的には、ずっと3DCG漬けになっていたところを、久しぶりに往年の手描きによるディズニー・アニメーションを見返したので、眼福だったけど。
 どちらもストーリーは至ってシンプルであり、それをひたすら歌と芝居で引き延ばす。それが当時の普通のアニメーションであり、その場その場のアイディアとそれを絵に起こす職人技。他人様のレビューには「夜のシーンが子ども時代のトラウマ」とあり、やっぱ画面の強度で勝負していたのだなぁと。
 とくに懐かしさを感じるのは背景。このレベルの背景は『眠れる森の美女』までしか観られない。以降はガクンとクオリティが落ちるし、CAPS導入後のデジタル彩色はやはり深みに欠ける(ジブリもそう)。当たり前に繰り出される水のアニメーションもまったく同様で、これも低迷期の人員整理によって技術が途絶え、その後も特殊効果のCG化によって復活することはなかった。