Asskicker

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのAsskickerのレビュー・感想・評価

4.0
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』




この映画の冒頭に「核爆弾を落とせる人間なんていない」という台詞があるが、その数秒後に「祖国は期待している。それは裏切れない。さらに成功したら昇進や勲章ものだ。人種や信仰なんて関係ない」というのがあり、人命よりも社会的地位を選ぶという愚かな選択(果たして愚かなのか分からないが)をした人間は実際に少なくはないだろうと感じた。


Dr.ストレンジラブは後半ラストの登場なのに釘付けになるほど記憶に残る人物だ。P.セラーズの一人三役の演技(英国軍将校・米国大統領・ドイツ帰化博士ストレンジラブ博士)がなければこの作品はここまで成功したものとはならなかったであろう。


この映画の面白いところは冒頭に本作はフィクションであると述べておきながら、モデルとなった人物が影にいたことである。

まず最初にDr.ストレンジラブ
彼のモデルは複数おり、
・エドワード・テラー     「水爆の父」

・ヴァルナー・フォン・ブラウン 元ナチの科学者

・レオシラード         コバルト爆弾の理論、コバルトを水爆に入れれば放射能が100年続く

続いて、バック将軍
彼はソ連に突入したからにはそれを徹底的に叩こうと言っていた狂気な軍人
彼のモデルは、
・ハマーン・カーン      「水爆戦争論」戦争が起きてもアメリカに人が数千人生き残ればいいじゃないか

・カーチス・ルメイ      戦略爆撃大好きな狂気の軍人、戦場を攻撃するのではなく相手の国そのものを滅ぼそう。
Ex)東京大空襲、ベトナム戦争、キューバ危機で核攻撃をしろとケネディ大統領に演説を行う

本作のブラック・コメディの要素としてナチを滅ぼしたはずのアメリカとソ連がナチの優生思想を抱き、核戦争後のシェルターに誰が入るべきかなどを話し合うシーンや、最終的に登場する性の話はただただ笑うしかなかったがウィットの利いた作品になっていた。

また愚かなお偉いさんらが核をおもちゃのように扱い、最終的にはヒトラーに敬礼をするような博士のユートピアに熱心に耳を傾ける姿にただただ呆れるばかり。右手の暴走とともにモノクロによって引き出された狂気に満ちた顔とその雄弁な演説とヒトラー崇拝は、自分で自分を制御できない姿同様に誰も手に負えなくなっていく姿が見て取れた。

ただ、パック将軍の言い分(やられる前に徹底的に叩け)に賛同してしまう自分がいたことにとても愚かさを感じてしまった。
            

Asskicker

Asskicker